研究課題/領域番号 |
24760330
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加納 剛史 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (80513069)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヘビ / ロコモーション / 自律分散制御 / ロボット / 適応的運動機能 / 可変形性 |
研究概要 |
生物は,その身体が持つ膨大な自由度を巧みに協調させることにより,環境適応的な振る舞いを示す.この現象を理解する上で,力学系に基づいて自律分散制御則を設計し,その妥当性をロボットを用いて検証する構成論的アプローチは有効な方法論となる.しかるにこのアプローチに基づく従来のロボットが示す環境適応性は,実際の生物に比肩し得るレベルには達していない.本研究では,この理由が「身体の可変形性」に関する考察が欠落しているためであるという作業仮説に基づき,一次元の単純な身体構造を有するヘビをモデル生物として採り上げ,その身体の可変形性に由来する豊富な感覚情報から生み出される環境適応的な振る舞いの発現機序解明を目的とした. まず,ヘビのロコモーション様式を理解するため,行動実験を行った.研究室内でアオダイショウを飼育し,フォースプレートの上でヘビをロコモーションさせることで,ヘビが地面や突起物を押しつける力を計測するとともに,撮影した動画を解析して体幹がなす曲線の曲率や身体表面の歪みの時空間分布に関する定量的なデータを取得した. 次に,行動実験結果をもとに,ヘビのロコモーションの数理モデル化を行った.モデル化に際し,身体の可変形性を考慮に入れ,運動に伴って生み出される身体の局所的な歪みに関する感覚情報を制御系にフィードバックする自律分散制御則を設計した.モデルの妥当性はシミュレーションにより検証した. さらに,柔軟な身体構造を有するロボットを設計・製作し,モデルの妥当性を検証した.提案した制御則をロボットに実装することで,ロボットはランダムに配置された杭を活用して推進することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では,平成24年度は1)ヘビのロコモーションの行動実験,2)身体の柔軟性を活用したロコモーションの数理モデリング,3)柔軟で連続体的特性を示す材質によるセンシング技術の開発,を行う予定であった.しかしながら本研究は,上記1)-3)のみならず,平成25年度に行う予定であったロボット実機の開発および検証実験まで完了している.したがって,本研究は当初の計画以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に開発したロボット実機は地面にランダムに配置された杭を活用して推進することができた.しかしながら,実際のヘビはさらに複雑かつ非構造な環境にも適応して推進することができ,そのメカニズムの解明までには至っていない.また,開発したロボットは,操縦が困難である,杭の配置によっては推進できないことがある,などの問題点を依然として抱えており,これらの問題を解決する必要がある. そこで,平成25年度では,多様な感覚情報を活用することで,実際のヘビに比肩し得る環境適応性の実現を目指す.現状のロボットは身体側面に生じる垂直方向の応力を感覚情報として検出しているが,剪断方向の応力もロコモーションにおいて重要な役割を果たしているはずである.そこで,剪断応力を活用した自律分散制御則を設計し,ロボットに実装することで,適応的ロコモーションの実現を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
剪断応力を活用した自律分散制御則をロボットに実装するためには,ロボットを再設計・構築する必要がある.それゆえ,ロボット製作用部品や三次元プリンタ・樹脂カセットが必要である.これらの消耗品としておよそ90万円を見積もっている. ロボットの製作に際し,研究補助に対する謝金として10万円使用する予定である. その他,研究打ち合わせおよび国内外での成果発表65万円,論文投稿料および外国語論文校閲料20万円を見積もっている.
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