研究課題
近年、少子高齢化社会へと日本が進む中、労働力の減少とそれに伴う熟練技術者の技術の喪失が問題になっている。このような背景の中、熟練技術者の技術を抽象化・定量化し、熟練技術を伝承するための理論体系を構築することを目的として研究した。 本研究では、人間のモーションの多くは環境との接触動作を含むので、その位置情報と力情報を抽出可能な外骨格型ロボットを用いた。まず、人間の慣性・摩擦・質量などの物理パラメータを同定した。これまでにも人間の物理パラメータを同定する手法は提案されているが、MRIのような大掛かりな装置を用いるもの、画像情報を用いる不正確なもの、等がほとんどであった。一方、外骨格型ロボットを用いることで、容易かつ高精度な人間の同定が可能になることをあきらかにした。次に、高速な動作でありかつ環境との接触を含む動作として、ハンマを用いた人間の打撃動作を抽象化した。同定した物理パラメータによる動特性を人間のモーションから分離することで、運動技術を加速度情報として抽出することに成功した。そして、この運動技術を他のロボットへと転写した。これは、他のロボットの動特性と再結合することにより、そのロボット固有の運動技術となる。人間のように各関節の干渉を陽に用いる複雑な運動を、複雑な式を解くことなく実現可能になった。結果として、提案技術を用いることで、モータが発揮できる最大速度を大きく上回る手先先端速度を実現した。最後に、別の被験者の身体を外骨格型ロボットによって適切な運動へと誘導することで、抽出した運動技術を教示することに成功した。この際も同様に、各関節の連携による高速な手先速度を実現した。これは、スポーツにおける手取り足取りの教示と同様であり、本研究成果を用いることでロボットが技術の教育を代替できるようになった。
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IEEJ Journal of Industry Applications
巻: vol.2, No. 6 ページ: 298-305