研究課題
プロセス制御分野では現在もPID制御が中心であるが,この分野では,技術の高度化に伴ってモデル予測制御の適用が進められている.申請者はこれまで,制御対象のモデルが正確に分かることを前提として,制御系の安全性を高めるために既約分解を用いた強安定予測制御系の構成に関する研究を進めてきた.これに対し,本研究の目的は,すでに運転されている制御系の入出力データおよび目標値信号を利用してモデルフリーな強安定系を構成する手法を開発すること,および強安定率という新しい概念を提案することであった.そのため,前年度に引き続き,平成25年度はこの2点に関する研究をまず行った.具体的には,既約分解表現を利用して強安定率の定式化を行った.さらに,セルフチューニングコントローラを構成し,それによって得られる制御系に対して強安定率の推移を検討した.本検討のポイントは,(1)制御系の安全性が強安定率の推移によって定量的に示される点(2)強安定系がセルフチューニングコントローラによって構成される点,にある.これらは,安定かつ安全なモデルフリー強安定系の構成という点で重要な意味を持つ.また,プロセス制御分野以外への適用も視野に入れ,ロボティクス分野の一つとしてヒューマノイドロボットの歩容生成に関する研究も行った.本研究ではヒューマノイドロボット全体のモデルに依存することなく,股関節および膝関節のトルクを生成させ,安定した歩行が実現できることを確認した.このように多角的な面からモデルフリー強安定系の構成法について検討を行い,それらの成果については国内外の会議で報告した.今後も引き続き,モデルフリー強安定系の構成法に関する研究を行う.
2: おおむね順調に進展している
研究実績にも記述したように,強安定率の概念を新たに提案したため.また,セルフチューニングコントローラによって得られる制御系の強安定率の推移を示すとともに,強安定系が構成できることを示したため.
これまでと同様に,研究が思うように進まない場合は,問題設定を単純化する.具体的には制御対象の次数低減化や1入力1出力系への限定などによって研究課題を推進する.
25年度,研究中に制御法の有効性を検証するため,非線形系の実験装置を作成する予定であったが,パソコンとマイコン間の通信プログラムの作成に当初計画していたよりも時間を要したため,完成に至っていない.そのため,未使用額が生じた.このため,未使用額は実験装置作成に対する消耗品費および論文掲載料に充てることとしたい.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Artifcial Life and Robotics
巻: Vol.18, No.3-4 ページ: 219/227
10.1007/s10015-013-0119-8