確率解析と統計力学に基づく非線形確率最適制御の新しい解法と学習への応用

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 24760338
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 佐藤 訓志 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60533643)
• キーワード: 非線形制御 / 確率制御 / 最適制御

研究概要

前年度に構築した手法は，非線形確率最適制御問題を解く際に帰着される，求解が困難な非線形２階偏微分方程式を，特別な指数変換と逐次近似による反復法を導入することで，確率解析により陽に解が得られるコルモゴロフ方程式という特別な方程式に帰着させることができ，これまでに十分な解法が得られていなかった非線形確率最適制御問題に対して系統的な解法を提供できるという大きな利点を有する．前年度までの結果は，計算方法の効率性は考慮しておらず，計算量が多いという課題があった．そこで当該年度は，前年度に構築した手法の並列計算に基づく計算量の削減を一つ目の目標として研究を遂行した．提案手法は，統計力学の手法に基づき多くのサンプルを生成し，個々のサンプルにおける動力学計算を行うことで，変換したコルモゴロフ方程式を解いており，これが計算量の増大の原因であった．当該年度の成果として，提案手法において個々のサンプルは独立に計算することが可能であることに着目し，各サンプルの計算に並列計算を組み込んだ計算方法を構築することで，提案手法の計算量の大幅な削減に成功した．
さらに，研究の目的の一つである「提案手法の実機検証，特に歩行ロボットを用いた最適歩行軌道生成問題への適用」を達成するために理論と実践の両面から研究を遂行した．まず理論面における成果として，二次元歩行ロボットモデルの不整地上の最適歩行軌道生成を非線形確率最適制御問題として定式化し，さらに提案手法に基づく解法を与え，数値シミュレーションにおいて有効性を確認した．一方，既存の歩行ロボット製品のほとんどが位置制御のみを想定しているが，提案手法を歩行ロボットへ適用するにはトルク制御が必要となる．そこで実践面における成果として，トルク制御可能なロボットシステム構築のために，トルク制御可能なシリアルモータを選定し，まずはこのモータ単体での制御システムを構築した．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度は，提案手法の特徴を活かした並列計算に基づく計算法を構築することができた．本手法により，提案手法の課題であった計算量を大幅に削減することができたため．

今後の研究の推進方策

今後はこれまでに得られた成果を基に，残りの研究目標である「提案手法のモデルフリー学習制御への拡張」と「提案手法の実機検証，特に歩行ロボットを用いた最適歩行軌道生成問題への適用」の達成を目指す．
一つ目の目標に対して，当該年度までに構築した提案手法をモデルを用いない学習的解法へと拡張する．具体的な方策として，研究代表者のこれまでの結果も利用することを考えている．まず制御対象を確率ハミルトン系に限定する．すると申請者のこれまでの確率ハミルトン系に関する研究結果より，モデル情報を用いずにノイズ下における評価関数の期待値の勾配が計算できるため，これを提案法と組み合わせることで非線形確率最適制御の学習的解法を構築する．
もう一つの目標に対しては，当該年度で得られた基礎実験の結果を利用する．すでに単体のシリアルモータのトルク制御システムは構築できたため，まずはこれを歩行ロボットの自由度分の複数個のモータについて拡張する．そこで得られるトルク制御可能な歩行ロボットに対して，当該年度で得られた不整地上の最適歩行軌道生成問題の提案手法に基づく解法を適用することで，提案手法の実機検証を行うことを考えている．

研究成果

• [雑誌論文] Bounded stabilization of stochastic port-Hamiltonian systems (2014)
  • 著者名/発表者名: S. Satoh and M. Saeki
  • 雑誌名: International Journal of Control new! 巻: 未定 ページ: 未定
  • DOI: 10.1080/00207179.2014.880127
  • 査読あり
• [雑誌論文] 過渡応答データを用いたフィルタバンクによるゲイン推定と Extension 定理 (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐伯正美・和田信敬・佐藤訓志
  • 雑誌名: 計測自動制御学会論文集 巻: 49 ページ: 425-431
  • 査読あり
• [雑誌論文] Speeding up of calculation for mu-synthesis of low order H-infinity controllers (2013)
  • 著者名/発表者名: T. Iwamoto, M. Saeki, S. Satoh and N. Wada
  • 雑誌名: SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration 巻: 6 ページ: 202-207
  • 査読あり
• [雑誌論文] Passivity based control of stochastic port-Hamiltonian systems (2013)
  • 著者名/発表者名: S. Satoh and K. Fujimoto
  • 雑誌名: IEEE Transactions on Automatic Control 巻: 58 ページ: 1139-1153
  • DOI: 10.1109/TAC.2012.2229791
  • 査読あり
• [雑誌論文] Gait generation via unified learning optimal control of Hamiltonian systems (2013)
  • 著者名/発表者名: S. Satoh, K. Fujimoto and S. Hyon
  • 雑誌名: Robotica 巻: 31 ページ: 717-732
  • DOI: 10.1017/S0263574712000756
  • 査読あり
• [雑誌論文] 学習最適制御に基づく軌道学習と身体パラメータ調整による最適歩容生成 (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐藤訓志・藤本健治・佐伯正美
  • 雑誌名: 計測自動制御学会論文集 巻: 49 ページ: 846-854
  • 査読あり
• [雑誌論文] モデルマッチングによるデータ駆動制御器設計のための参照モデルの選定 (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐伯正美・山成真輝・和田信敬・佐藤訓志
  • 雑誌名: システム制御情報学会論文誌 巻: 27 ページ: 73-79
  • 査読あり
• [学会発表] A study of stochastic input-to-state stability of a class of stochastic port-Hamiltonian systems (2014)
  • 著者名/発表者名: S. Satoh and M. Saeki
  • 学会等名: Mathematical Theory of Networks and Systems
  • 発表場所: The Netherlands
  • 年月日: 20140707-20140711
• [学会発表] 確率一般化正準変換に基づく確率ポート・ハミルトン系の外乱抑制 (2014)
  • 著者名/発表者名: 佐藤訓志・佐伯正美
  • 学会等名: 第1回計測自動制御学会 制御部門マルチシンポジウム
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 20140304-20140307
• [学会発表] 解析的中心を用いたデータ駆動オンライン非反証制御 (2014)
  • 著者名/発表者名: 佐伯正美・近藤耕・和田信敬・佐藤訓志
  • 学会等名: 第1回計測自動制御学会 制御部門マルチシンポジウム
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 20140304-20140307
• [学会発表] 確率外乱を受ける対象運動に対する視覚オブザーバの推定性能解析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 山内淳矢・佐藤訓志・畑中健志・藤田政之
  • 学会等名: 第1回計測自動制御学会 制御部門マルチシンポジウム
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 20140304-20140307
• [学会発表] 経路積分確率最適制御に基づく不整地歩行のための軌道生成について (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐藤訓志・佐伯正美
  • 学会等名: 第14回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会
  • 発表場所: 兵庫
  • 年月日: 20131218-20131220
• [学会発表] 確率力学系に対する確率有界安定化 (2013)
  • 著者名/発表者名: 南部僚太・佐藤訓志・佐伯正美
  • 学会等名: 第22回計測自動制御学会中国支部学術講演会
  • 発表場所: 山口
  • 年月日: 20131130-20131130
• [学会発表] データ駆動ループ整形法による非線形フィードバックゲインの調整 (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐藤健一郎・佐伯正美・和田信敬・佐藤訓志
  • 学会等名: 第22回計測自動制御学会中国支部学術講演会
  • 発表場所: 山口
  • 年月日: 20131130-20131130
• [学会発表] 倒立振子の確率有界安定化について (2013)
  • 著者名/発表者名: 南部僚太・佐藤訓志・佐伯正美
  • 学会等名: 第57回システム制御情報学会研究発表講演会
  • 発表場所: 兵庫
  • 年月日: 20130515-20130517
• [学会発表] ボリュームレンダリングによる制御器のパラメータ空間設計 -GPUによる高速計算- (2013)
  • 著者名/発表者名: 黒坂友亮・佐伯正美・和田信敬・佐藤訓志
  • 学会等名: 第57回システム制御情報学会研究発表講演会
  • 発表場所: 兵庫
  • 年月日: 20130515-20130517
• [備考] 佐藤 訓志
  • URL: http://home.hiroshima-u.ac.jp/satoh/index_ja.html
• [備考] Satoshi Satoh
  • URL: http://home.hiroshima-u.ac.jp/satoh/index.html