研究実績の概要 |
最終年度は、前年度からの残余金を用いて、主に研究成果の発表に努めた。それは、前年度に発表予定であった内容(遅延が発生したため発表を中止したもの)を予定通りに遂行したものである。具体的には、デコヒーレンスフリー部分系(DFS)へ状態転写をする際に、最適制御を用いて、入力波形の整形負荷を低減する、という内容である。これは、以前にハーバードで提案されたプロトコルを包含する手法であり、DFSベースの量子情報処理の実現に寄与する成果である。同時に、研究タイトルに挙げている通り、この手法がシステム制御理論に立脚する最適制御理論を用いたものであることを強調したい。 最後に、研究期間全体を通じて実施した研究の成果について述べる。申請書に記載した元々の研究目的は次である:(A) DFSの設計理論をシステム制御理論に基づいて構築する。(B) システム制御理論の道具を用いて、DFS量子情報処理を安定・ロバスト化するための方法論の開発。(C) 対象を一般の量子系へ拡張。Aについては、対象が線形である場合に完全な解答(DFSが存在するための必要十分条件)が得られ、主な成果をIEEE Trans Automat Control で発表した。Bについては、Aの成果に基づく、フィードバック制御による安定なDFS生成法の一般的プロトコル構築に成功した。さらに、DFS量子情報処理の初期化に相当する状態転送のためのプロトコル構築にも成功した。主な成果はそれぞれ、Physical Review X, New Journal of Physics に掲載された。Cの非線形系への拡張については、大なる成果を挙げるに至らなかったが、予備的な計算結果が得られており、今後の研究につなげていく予定である。
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