本研究の目的は,二関節筋を有するロボットマニピュレータの位置決めをオープンループで制御し,軌道生成やマニピュレータの不確かさの対処に視覚情報と触覚情報を用いることでロボットに生物の有する環境に対する柔軟性を獲得させた生物規範型のロボット制御を提案することにあった. この研究目的に対して,本年度は二関節筋ロボットの運動モデルにおいて,視覚情報と触覚情報を用いたシステムを再検討したが,腕の関節角度を用いずにシステムを表現し安定性解析をおこなうまでには至らなかった.そこで,腕の関節角度,視覚情報と触覚情報を用いたシステムの検討に加えて,人間が動作を繰り返すことでその動作の精度を向上させる学習制御のアプローチにより,モデルの不確かさに影響を受けにくい制御系を設計し安定性解析をおこなった.それにより,二関節筋を有するロボットマニピュレータに生物の有する柔軟性のひとつを獲得させたと考えることができる.そしてMATLABとSimulinkを用いたシミュレータによりその有用性を確認した.実験システムにおいては,空気圧アクチュエータ,DCモータ,バネ,ダンパなどを用いたプロトタイプを複数作製した.3対6筋モデルをそのままロボットとして再現した場合,ハードウェアとしての干渉(1つのアクチュエータが他のアクチュエータに悪影響を及ぼす)が避けられず,ソフトウェアを介して干渉を取り除く必要があるとの結論に至った.これらを踏まえ試作した実験システムで再現できる状況に対して,二関節筋の有無により手先に加わる力の影響を検討した.得られた研究成果を国際会議などで発表した.
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