研究課題/領域番号 |
24760344
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 孝之 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (60599207)
|
キーワード | 制御工学 / アルゴリズム / 確率近似法 / 数理工学 |
研究概要 |
確率近似法とは、観測値に雑音が含まれていても、その値から未知方程式の解を求めることができる反復解法の一つであり、オンラインでのパラメータ同定や適応制御を行う際に必要となる基本的な方法である。本研究の目的は、この確率近似法について、理論的保証のある厳密な停止則を導出することである。つまり、アルゴリズムが出力する解の推定値について、精度を指定すると、その精度を達成するために必要な反復回数が得られるようにすることである。 本年度は、研究計画に沿って初年度の研究成果を整理し、論文を作成した。具体的には、昨年度得た基本的な確率近似法のための停止則と、最適化のための有限差分確率近似法と同時摂動確率近似法についての研究成果をまとめた。その中で、これまでの基本的な問題設定を一般的な問題設定へと拡張した。 次に、確率近似法の中で有力な方法の一つである平均化を用いる確率近似法についても研究をおこなった。昨年度は未知方程式の解を求めるという、最も基本的な問題を考えていたが、当該年度は、最適化を行う場合を考察した。その中で、従来考えられていたよりも、さらに簡単な更新則を用いたとしても、確率的な意味で最適解を求めることが出来ることを示した。これは、停止則を導出する際に、アルゴリズムの過渡的な動作を具体的に解析することにより得られたものであり、従来の収束性のみを考えるという立場とは異なった視点に立って研究したことにより生まれた結果である。 昨年度に引き続き、イタリア共和国、イタリア国立研究評議会電子情報通信研究所の Roberto Tempo 博士、Fabrizio Dabbene 博士との共同研究を行った。現在、テクニカルな部分の修正を行っており、これが終了次第、成果をまとめて発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標通り、論文を作成することができたためおおむね順調に進展していると判断する。当該年度は、本研究課題以外の研究プロジェクトにて、本研究課題の成果を応用出来たことも成果の一つであると思っている。具体的にはマルチエージェント系の合意制御に本研究課題の結果を適用して研究を進め、合意制御において通信雑音がある場合について、どれほどの通信量で合意が得られるかについて理論的な結果を得ている。共同研究については、地理的に離れていることもあり、当初の想定よりは若干遅れているため、次年度集中的に取り組む。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度であるので、研究のとりまとめを行っていく。現在までの達成度で書いたとおり、共同研究については、地理的に離れていることもあり、当初の想定よりは若干遅れている。具体的には、理論的考察の最後の部分で、かなり慎重に考察を行わなければならない部分があり、その部分の数学的証明の確認・修正作業を行っている段階である。これについては、最終年度中に研究成果としてまとめていきたい。 当初の研究計画では、雑音に相関がある問題設定を考えることとしていたが、これにとどまらず、マルチエージェント系の合意制御など他の制御問題に対して、本手法の適用を積極的に考えていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
購入予定の研究資料が本年度中に間に合わなかったためである。 次年度使用額を加えたとしても、次年度の総額は当該年度の使用額より10%程度少額である。そのため、本年度と同様に活動することで全額利用可能である。
|