本研究は,未知方程式の解を、雑音を含む方程式の残差をもとに解くための反復解法である確率近似法に対する停止則を構成することである。この解法は雑音の影響を受けるため、解の候補はその影響を受けている。そのため、解の候補だけに着目していると収束しているか判断できない場合もある。また、アルゴリズムの実行前に、アルゴリズムが出力する解の推定値の精度を指定するだけで、その精度を達成するための反復回数の情報がえら得られれば、アルゴリズム実行前に実行時間の見積もりなどを行うことが可能となり非常に有用である。これは、確率近似法の計算複雑さについて精密な知見にもつながる。 研究初年次は非線形方程式を解くための確率近似法に対して停止則の構成を行った。また、確率近似法の中で有力なテクニックの一つである平均化を用いる方法についても、停止則を構成できることを明らかにした。 研究二年次は初年次から引き続き、未知の目的関数に対する最適化法である有限差分確率近似法と同時摂動確率近似法を対象に研究を行った。具体的には、初年度は凸な二次関数に話を限定していたが、それを二次関数に限らない凸関数のクラスへと拡張を行った。 研究最終年度である本年度は、これまでに得られた結果をまとめ、学術論文への投稿を行った。また、研究をまとめる中でいくつかの問題点が明らかになってきた。具体的には、非線形方程式に対する確率近似法の停止則の構成に不備が見つかった。この点について修正を行い、より完成度を高め、国内学会にて発表を行った。また、平均化を用いる確率近似法について、有限差分確率近似などへの応用についての検討も行った。この結果については国際学会にて報告した。
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