研究課題/領域番号 |
24760346
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保 善司 金沢大学, 環境デザイン学系, 准教授 (50324108)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コンクリート / アルカリ骨材反応 / 凍結防止剤 / 複合劣化 |
研究概要 |
24年度は、凍結防止剤散布地域における塩化物イオンの浸透状況を現地調査で明らかにするとともに,室内試験による促進浸透試験によってその塩化物イオンの浸透状況(分布,深さ)につついて濃度の影響などを詳細に明らかにすることとし,現地調査に基づく凍結防止剤散布下における塩化物イオンの浸透状況の把握、室内試験に基づく凍結防止剤散布下における塩化物イオンの浸透現象の解明に関する検討を行った。 現地試験においては、凍結防止剤の影響を受けた実橋脚において,外観目視を中心とした事前調査によって対象構造物の劣化程度をグレーディングし,劣化程度の異なる橋脚を選択し,ドリル法による塩分採取を実施し、サンプルを採取した。採取したサンプルの塩分分析を行い,凍結防止剤の影響度および劣化程度の異なる橋脚の塩化物イオン浸透分布の特徴を把握した。これらの調査結果から,散布期間約20年後において,コンクリート表面から8cm(かぶり位置)の塩化物イオン量は腐食発生限界を超えていたこと、さらには、特徴的な分布パターンが認められる反面、局所的なひび割れなどの影響を受ける場合もあることが明らかとなった。 他方,室内試験においては、濃度の異なる塩化物イオン溶液を用いて、乾湿繰り返しによって凍結防止剤の特徴である溶液形態の塩分浸透現象を実験的に再現し,吸水、逸散量、繰り返しサイクル後の塩分浸透分布(塩分分析)を把握し,毛細管浸透による塩分浸透現象を検討した。また、対象となるコンクリートの水セメント比も数レベル用意した結果、得られた浸透分布と実験条件から特定のパターンが見いだされ、分布の特徴と品質には一定の関連性のあることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(24年度)の計画においては、凍結防止剤散布下の実構造物における浸透分布の把握と、室内試験による液状における塩分浸透現象を解明することであった。現地試験および室内試験のいずれにおいても、当初予定した検討をおおむね終えることができた。現地調査では,局所的なひび割れの影響がない場合には、おおむね室内実験から予想される塩化物浸透分布パターンと同様の考えで把握できることを確認することができた。他方、実構造物においては,凍結防止剤の流下経路にその浸透量が大きく影響されることも明らかにすることができた。 他方、室内試験においては,濃度が塩分浸透に大きく影響を与えるとともに、対象となるコンクリートの品質(水セメント比)が浸透分布形状に大きく影響を与えることを明らかにすることができた。現地調査および室内試験から得られた成果は,次年度以降の研究遂行に必要な知見を充足しており,初年度における研究目的の達成度はおおむね順調と判断した。なお、現地調査,室内試験を統合した検討については、次年度以降に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度においては、アルカリ骨材反応を生じていない場合の凍結防止剤散布の影響について、主に検討をおこなった。次年度は、これにアルカリ骨材反応および膨張によるひび割れの影響を考慮した検討を行う。現地調査では,アルカリ骨材反応による劣化が生じていると判定され、かつ、凍結防止剤散布の影響を受けている構造物を選定し、それらの構造物における塩分浸透分布の特徴を把握する。他方、室内試験においては、アルカリ骨材反応性の骨材を使用したコンクリート供試体を作製し、アルカリ量や鉄筋拘束等を調整することで、膨張量を制御し、所定の膨張量において塩化物イオンの浸透実験を行い、アルカリ骨材反応およびそれに伴うひび割れが塩化物イオン浸透に与える影響を把握する。これらの実験においては、アルカリ骨材反応以外の要因については初年度と共通事項も多く、そのノウハウを活用し、円滑に進める予定である。 最終年度では、次年度に作製した供試体を活用し、アルカリ骨材反応が生じたコンクリート中に浸透した塩化物イオンと腐食の関係を、電気化学的手法によって明らかにする予定である。これらに現地調査、塩化物イオンの浸透過程などを総合的に検討し、結果等の分析を踏まえて、アルカリ骨材反応および塩害の複合劣化が生じた構造物の劣化進行のパターンの提案を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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