外観目視を中心とした事前調査による凍結防止剤の影響を受けた劣化構造物の劣化程度のグレーディング,構造物から採取したサンプルの塩分分析結果の分析結果に基づき,外観グレーディングと凍結防止剤の影響度の関係について統計解析手法を用いた分析を行った.その結果,凍結防止剤の影響度の相違によって,塩分浸透状況の相違の特徴として水分率等の補足情報が有用であるとの知見を得た. これらの結果を受けて,アルカリ骨材反応および凍結防止剤の両者の影響を受けている劣化構造物の外観調査,および表面水分率調査を実施し,実構造物におけるアルカリ骨材反応による劣化程度および凍結防止剤の影響度の異なる劣化構造物および劣化箇所の選定を行った. アルカリ骨材反応および凍結防止剤による複合劣化を生じた構造物においては,ASRの進行が早く,コンクリート表面に著しいひび割れが多数発生したものについては,すでに塗膜系の表面処理あるいは断面修復,さらには剥落防止のためのFRPシート等による補修対策が実施されていた.そのため,比較的軽微な未補修の橋台を対象に,ひび割れ密度,水分率を測定するとともに,鉄筋のはつり調査,塩分分析,電気化学的な腐食測定などを実施し,ASR膨張によるひび割れが,凍結防止剤による塩害進行に与える影響を検討した。その結果,ASR膨張によるひび割れが塩害を促進する要因となりえることが明らかとなった。
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