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2013 年度 実施状況報告書

コンクリート中の鉄筋腐食に与える環境の影響

研究課題

研究課題/領域番号 24760347
研究機関京都大学

研究代表者

高谷 哲  京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40554209)

キーワードコンクリート / 鉄筋腐食 / ひび割れ / 腐食生成物
研究概要

様々な環境下で腐食促進試験を行ったコンクリート中の鉄筋の腐食生成物を粉末X線回折分析することにより,腐食生成物の違いがひび割れ幅と腐食量の関係に与える影響が大きいことが明らかとなった.特に電食試験や促進試験を行った場合には,体積膨張倍率の大きなCaFeClO2が(γ=6.9倍)が生成することにより,少ない腐食量でひび割れが進展しやすいことが分かった.電食試験で生成したさびおよび実構造物から採取したさびのさび層をEPMAで観察し,比較した結果,電食試験で生成したさびには広範囲にCaイオンやClイオンが分布しており,これらのイオンが取り込まれやすかったことが分かった.このことから,電食試験や促進試験では材齢が若い試験体を水溶液に浸漬させて試験を行ったために,未水和のセメントがコンクリート中の細孔に溶け込み,CaイオンやClイオンがさび層に取り込まれやすかったと考えられる.
一方で,実構造物においては,腐食生成物の体積膨張倍率は2.1~3.0倍程度となることが分かった.体積膨張倍率の小さなFe3O4が生成しやすい環境では体積膨張倍率が2.1倍となり,β-FeOOHやγ-FeOOHが生成しやすい環境では体積膨張倍率が3.0倍程度になると考えられる.この違いは,腐食が進行して鋼材周辺のpHが低下すると,β-FeOOHやγ-FeOOHがFe3O4に還元されることに原因があると考えられ,特に腐食速度の大きな環境ではpHが低下しやすく,また還元に水が必要なことから,常に水分が供給される環境下ではFe3O4への還元が進みやすいと考えられる.
腐食量とひび割れ幅の関係に与える影響については,2013年のコンクリート工学年次論文報告集に掲載され,コンクリート中の腐食生成物の生成プロセスについては,現在土木学会論文集に投稿中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該研究課題の当初の目的は,腐食ひび割れと腐食量の関係に与える腐食生成物の影響を明らかにし,腐食環境を考慮して腐食ひび割れ幅から腐食量を推定するモデルを構築することである.これまでの研究で,腐食ひび割れと腐食量の関係に与える腐食生成物の影響については明らかにすることができ,体積膨張倍率の小さなFe3O4が生成しやすい環境では体積膨張倍率が2.1倍となり,β-FeOOHやγ-FeOOHが生成しやすい環境では体積膨張倍率が3.0倍程度になるという結果が得られている.ただし,この違いの原因はβ-FeOOHやγ-FeOOHの還元が生じるか否かであると推察しており,常に水分が供給される環境下ではFe3O4への還元が進みやすいと考えているが,まだ還元条件等について明確に分かっておらず,腐食環境を考慮して体積膨張倍率を定めるためには,還元条件についてもう少し検討が必要であると考えられる.

今後の研究の推進方策

上述のように,β-FeOOHやγ-FeOOHの還元についてまだ課題が残されている.今年度は,追加実験を行いさらに分析を進め,分極試験等により腐食鋼材の電気化学的特性を測定することでこの還元条件について明らかにしたいと考えている.また,還元にはpHや電位,各種イオンの存在など様々な影響因子が関係しているため,各FeOOH系さびの単膜を作製し,様々な環境下における還元電流の測定なども試みたい.

次年度の研究費の使用計画

研究そのものは順調に進んでいたが,研究を行う過程で,腐食生成物の生成プロセスについて新たな課題が生じた.そこで,一部計画を変更し,追加で腐食生成物の生成,変化に関する実験を行うことにしたため,未使用額が生じた.
上記の課題を解決するために,次年度に追加で腐食生成物のX線回折分析,コンクリート中で生成するさび層のEPMA分析を行うこととし,未使用額は試験体の作製および分析費用に充てる.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] コンクリート中の鉄筋の腐食生成物の違いがひび割れ発生腐食量に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      高谷哲,中村士郎,山本貴士,宮川豊章
    • 雑誌名

      土木学会論文集E2

      巻: 69 ページ: 154-165

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 腐食生成物の違いがひび割れ幅と腐食量の関係に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      西澤彩,高谷哲,中村士郎,宮川豊章
    • 雑誌名

      コンクリート工学年次論文集

      巻: 35 ページ: 1051-1056

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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