本研究は,高速道路等に冬季に散布される凍結防止剤が路面排水として,ジョイント等から流出することにより橋脚等が塩害劣化することを想定した実験的検討である.塩分を含む路面排水が橋脚を流下する場合,塩水が流れる範囲が限られており,劣化が局所的な範囲で進行すること,また劣化の進行が非常に早いことが,維持管理上問題となっている.そこで,コンクリート供試体の一部に塩水が定期的に供給される乾湿繰り返し試験を実施して,コンクリート中に急速に塩分が浸透する現象について明らかにすることを目的とした. 実験では,幅400mm×高さ600mm×厚さ120mmのコンクリート供試体を作製し,400×600mmの半面の幅200mmの範囲に,濃度3.5%の塩水を1日流下させた後,6日室内乾燥させるという乾湿繰り返し試験を実施した.試験期間1ヶ月および3ヶ月で,塩水流下範囲の境界部等でドリル法により粉末試料を採取して,JIS A1154の電位差滴定法により塩化物イオン濃度を評価した.その結果,塩水の流下範囲の境界部から塩水が流出していない乾燥した部分に,毛細管浸透現象が発生していることが確認された.この塩水流下範囲の境界部では,直接塩水が流下して乾湿繰り返しを受ける部分よりも非常に高濃度の塩化物イオンが浸透していることが明らかとなった.この現象が,凍結防止剤の塩害において局所的に急速に劣化が進行する要因の一つであることが判明した. また,凍結防止剤の塩害は夏季は雨水による影響を受ける.そのため,3ヶ月の塩水流下試験の後,6ヶ月間の真水流下による乾湿繰り返し試験を実施した.その結果,コンクリート表面の塩分は洗い流されるが,内部に浸透した塩化物イオンは,ほとんど流出しないことが明らかとなった.そのため凍結防止剤塩害では,塩分の浸透を防止することが維持管理上,重要であることが示された.
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