研究課題/領域番号 |
24760358
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 聖三 東京大学, 地震研究所, 助教 (10439557)
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キーワード | 流体-構造連成 / 大規模並列計算 |
研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き,構造解析手法および,自由表面を考慮した流体解析手法の構築を行った.昨年度は,オープンソフトの構造解析ソフトであるADVENTURE_Solidをベースに亀裂といった不連続現象を取り扱うことが可能な粒子離散化手法(PDS)を導入し,構造物の亀裂進展解析を行うことを可能であることを確認した.PDS有限要素法の有効性が確認できたため,本年度はより大規模な地震動問題を高速に解くことに特化した地盤-構造連成解析手法(GAMERA)による構造解析の開発を進めた.当手法はMulti-Grid法に基づく前処理に精度混合演算を組み合わせたもので,京コンピュータのような大規模システムでも高効率に解析を進めることが可能であるのはもちろんのこと,中規模,小規模システムにおいても演算を高速に行うことができる有効な手法である.今後はこの構造解析手法にPDS有限要素法を導入する予定である.通常,構造物は津波により被害を受ける前に,地震動による被害が生じ,耐久性が劣化している.このため,地震動による地震動応答解析により被害を評価し,これを考慮した津波被害解析を行うことにより,より現実に則した被害予測が可能となると考えられる.本年度は特に大規模解析手法の開発に注力し,京コンピュータ上で1億自由度を持つ重要構造物の地震動応答解析を行うことが可能となった.来年度はPDSを導入し,津波解析とのインターフェースの開発を行う. また流体解析ソースにおいては,昨年度から引き続き京コンピュータ上で,メモリキャッシュチューニングを施した.実行性能において,ピーク性能比2%から5%と効率的な計算を行う事ができるようになった.今後も高速化チューニング等を行っていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画においては,当年度は25年度に開発を行った流体解析手法および構造解析手法の検討を継続して行うとともに,並列計算手法の高効率化を行ってきた.構造解析手法として,地震動による被害評価が行えるよう,地盤-構造連成の地震動応答解析手法の開発を行った.当初計画では,両手法の結びつける連成インターフェースを整備し,同一コードとして動作する連成解析手法を構築するものであったが,本年度はその準備段階に留まっている.この点においては,当初計画より若干の遅れがあるが,1億自由度を越える大規模問題に対して,高効率に解析を進めることが可能な手法の構築を行っており,総合的にみれば当初計画と遜色のない達成度であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,24,25年度に開発を行った流体解析手法および構造解析手法の検討を継続して行うとともに,両手法の結びつける連成インターフェースを整備し,同一コードとして動作する連成解析手法を構築することが急務である.連成解析手法としては,流体と構造の相関を交互に評価する弱連成手法,もしくは流体から構造へ力を受け渡すOne-way方式を採用する予定である.弱連成手法は,時に相関力を低く評価する事例もあるが,本研究でターゲットとする現象は,流体の変形量(自由表面移動量など)に比べ,構造物の変位は小さなものであるため,計算時間,記憶容量に有利な弱連成手法で対応可能であると考えられる.また,One-way方式では,構造物の変形が流体側に反映されないため,壁面に穴が開いたり,漂流物となったりするような問題には適用ができないが,構造物の被害推定において,十分に機能すると考えられる. また,これまでに作成された解析コードを用いて,実地形問題へ適用を行う.そのためのモデル作成を行う.構造物の幾何形状や詳細な地形を表現した精緻なモデルを作成する.津波現象は広大な領域内で起こる現象であり,その精緻なモデリングを行うためには膨大なデータをロバストに処理する必要があるため,アルゴリズムを開発し,システムを構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度(平成25年度)の参加学会の多くが東京開催であったこと,京コンピュータがリモートアクセス可能となったことで旅費が少なくなったため. 物品費として3次元メッシュ生成ソフトの購入費やデータ保存用のHDDの購入費として50万円を計上する.また国内外の学会参加のため,10万円の旅費を計上している.その他の費目に計上している8万円は学会参加費や,成果論文投稿料である.
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