研究課題/領域番号 |
24760360
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松崎 裕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10506504)
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キーワード | 地震動強度指標 / 非線形応答 / 地震動 / 最大応答変位 / RC橋脚 |
研究概要 |
平成24年度は、構造物の非線形地震応答に大きな影響を及ぼすことが指摘されている地震動の位相特性に着目した地震動強度指標を提案し、既往の地震動強度指標に比べて、地震動強度と非線形最大応答変位との相関性が有意に向上していることを示した。一方で、当該指標は、地震動の位相特性に関わる物理量としての群遅延時間の標準偏差と、降伏剛性に対応した固有周期からの長周期化を考慮し、ある固有周期帯における弾性応答加速度の平均値の積に着目していた。その結果、対象構造物の固有周期が長くなると、非線形最大応答変位の推定精度の向上度がやや低減してしまうことも、平成25年度前半までの追加検討において、課題として明らかになった。 そこで、平成25年度は、特にこの問題の解決のために、構造物に入力される瞬間的な地震動エネルギー、すなわち固有周期の半分に相当する時間内における地震動加速度と構造物の弾性応答速度の積の時間積分値に着目し、その時間積分値をある固有周期帯で平均化することで、地震動特性に加えて、構造物の弾性応答特性と非線形応答時の長周期化の影響を考慮した地震動強度指標を構築した。平成24年度の指標は構造物の地震応答に影響を及ぼす地震動そのものの特性に着目している一方で、平成25年度に検討した指標は、地震動が作用した結果である構造物の応答特性に着目した点が大きく異なる点である。固有周期の異なるRC橋脚の非線形最大応答変位との相関性について検討を行った結果、提案地震動強度指標は、対象RC橋脚の固有周期の長短に関わらず、既往の地震動強度指標に比べて、非線形最大応答変位との間で高い相関性を有することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に検討を行った構造物の非線形最大応答変位に対応した地震動強度指標を用いて、平成25年度に構造物の地震時損傷リスク評価を行う予定であったが、広範な構造諸元に対する適用性の追加検討が必要だと判断し、それらを中心に研究を実施した。そのため、構造物の非線形最大応答変位に対応した地震動強度指標に関する研究は深化したが、当該指標を用いた上での検討が必要な構造物の地震時損傷リスク評価に遅れが生じたことから、全体としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画において、平成25年度に行う予定であった構造物の地震時損傷リスク評価に関する検討について、広範な構造諸元に対する適用性が確認された非線形最大応答変位に対応した地震動強度指標に基づく検討を平成26年度に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に検討を行った構造物の非線形最大応答変位に対応した地震動強度指標を用いて、平成25年度に構造物の地震時損傷リスク評価を行う予定であったが、平成25年度に参加した研究発表会における議論を踏まえ、線形応答領域と非線形応答領域の整合性や広範な構造諸元に対する適用性の追加検討が必要だと判断し、それらを中心に研究を実施した。そのため、非線形最大応答変位に対応した地震動強度指標に関する研究は深化したが、構造物の地震時損傷リスク評価に充てる予定であった経費の一部に未使用額が発生した。 当初の研究計画において、平成25年度に行う予定であった構造物の地震時損傷リスク評価に関する資料収集の一部、解析および成果発表を平成26年度に行うこととし、未使用額はそれらの経費に充てる予定である。
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