平成26年度は、構造物の固有周期の半周期における地震動加速度と構造物の弾性応答速度の積の時間積分値に関する時刻歴の最大値に着目し、各固有周期におけるその最大値について構造物の非線形応答に影響を及ぼす固有周期帯において平均化したものを地震動強度指標と定義して、検討を進めた。構造物の非線形応答に影響を及ぼす固有周期帯については、構造物の降伏剛性に対応した固有周期と降伏水平震度の2つのパラメータに基づいて評価することとし、RC橋脚を適用対象として、その影響範囲を同定した。その結果、固有周期0.5秒程度の短周期側ではエネルギー一定則から推察されるように、降伏水平震度が小さい程、非線形応答に影響を及ぼす固有周期帯の範囲は大きく算定された。一方で、固有周期1秒よりも長周期側では変位一定則から推察されるように、降伏水平震度が変化しても、ほとんど非線形応答に影響を及ぼす固有周期帯の範囲は変化せず、降伏剛性に対応した固有周期だけでほぼ非線形最大応答変位を説明できることが確認された。なお、いずれの降伏剛性に対応した固有周期においても、結果として生じる応答塑性率の大きさ程には非線形応答に影響を及ぼす固有周期帯は長周期化しておらず、原因としての非線形応答の説明に必要な固有周期帯と、結果として生じる非線形最大応答変位の関係について興味深い示唆を与えている。 以上のように、降伏剛性に対応した固有周期と降伏水平震度に基づいて非線形応答に影響を及ぼす固有周期帯を同定することで、提案した地震動強度指標は、RC橋脚の非線形最大応答変位との間で決定係数が概ね0.9以上の極めて高い相関性を有することを示した。さらには、提案指標を用いることで、構造物の非線形応答の推定に伴う不確定性が低減し、損傷度の閾値と比較して評価されるリスク評価が合理化されることを示した。
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