研究代表者らは,鉄筋を橋脚に接触配置し,鉄筋かぶり分のみポリマーセメントモルタル(PCM)を吹付ける工法を開発した.本工法の特徴は,PCM吹付けにより安定した施工ができる,PCMは中性化速度がコンクリートの1/5以下のためにかぶり厚を薄くでき巻立厚をRC巻立工法の1/5程度に低減できる,河積阻害率の制約を受けにくい,自重の増加を抑えることできるなどが挙げられる.一方,近年,高耐久性材料である炭素繊維補強材(CFグリッド)が先進材料として土木分野でも注目されつつある.CFグリッドは,錆びないため高耐腐食性で,鉄筋に比べて5倍強の高強度である.そのため,CFグリッドを鉄筋の代替筋として用いる場合,かぶり厚をさらに小さくでき,補強筋量も少量でよく経済的にも有利となり得る.しかしながら,補強設計上重要なコンクリートやPCMとの付着特性について明らかにされていないのが現状である.そこで本研究課題では,CFグリッドを補強筋として用いた補強部界面の付着特性を明らかにして,新工法となる高耐久性である耐震補強の開発を行う. 平成24年度は以下の検討を行った. ① CFグリッドの強度特性の解明(4月~9月):CFグリッドの引張筋としての特性を解明するために,引張試験を実施した. ② CFグリッドとPCMの付着特性の解明(7月~3月):付着特性は鉄筋であれば鉄筋径と付着面積で評価されるが,CFグリッドの場合は縦筋および横筋の交差部(交点)の機械的アンカーによって付着力が確保されると予想される.このことを検証するために,CFグリッドとPCMの付着強度試験を実施した. ③ 現有装置の改造(10月~3月):CFグリッドを補強筋とした試験体を載荷できるように改造した.
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