研究課題/領域番号 |
24760368
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
中藤 誠二 関東学院大学, 工学部, 准教授 (90339789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 矩形断面柱 / 相関長さ / ストローハル成分 / 変動風速 / 抗力係数 / 変動揚力係数 |
研究概要 |
初年度は,矩形断面柱模型を対象に,まず変動風速による相関長さの評価および空気力の測定を行った.測定は2点間の間隔を1mm刻みで変化させて行うことで高い空間分解能でもって評価した.相関長さの評価手法としては,変動風速のストローハル成分に着目して,軸方向相関長さと流れ方向相関長さの評価手法を提示した.流れ方向相関長さについては,ストローハル成分の不規則な振動をインパルス応答の重ね合わせととらえて減衰定数を求め,移流速度を考慮して求めた.辺長比1については,軸方向相関長さLc=5.8D,流れ方向相関長さLc,x=17.2Dで,辺長比3についてはLc=18D,Lc,x=13.8Dといった結果が得られている(Dは断面高さ). 辺長比3の矩形断面については付加物を取り付けることで,変動風速のスペクトルは広帯域となりストローハル成分に着目した相関長さでは有意な結果が得られなかった.空気力については,抗力係数は流れ方向の見つけ面積の増加率よりも大きい増加率となったが,変動揚力係数は約20%まで低減する結果となった.辺長比の大きい断面では,抗力方向には断面2次モーメントが大きいため,揚力方向の空気力を低減させられることは耐風対策上,メリットが大きいといえる. 種々のセンサーで総合的に変動流れ場を把握する観点からマイクロホンを用いて,矩形断面柱を対象に空気力と遠方場の音圧を同時測定しその相関特性について調べた.暗騒音のレベルが高いため,変動揚力のストローハル成分に対応した音圧のピークは判別できないが,相互相関を求めることで,変動揚力に起因する音圧の成分が含まれていることを確認した.また,レーザードップラー流速計(LDV)については,キャリブレーションを行ったのち,矩形断面柱の後流の変動風速の測定を行い,平均成分について既往の測定結果と対応した値が得られていることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は矩形断面柱模型を対象に,変動風速,空気力,遠方場音圧などの測定を行い,流れ場の変動特性について特にストローハル成分に着目して整理した. ストローハル成分の空間的な同期が,橋桁などの構造物の挙動に大きく影響するとの観点から,同期の程度を示す指標として,軸方向相関長さおよび流れ方向相関長さの評価手法を提示し,特に流れ方向相関長さについては,ストローハル成分の不規則な振動をインパルス応答の重ね合わせととらえて減衰定数を求め,移流速度を考慮して求めた.付加物を取り付けた場合の変化についてもいくつかのケースで実験を行い,軸方向に位相がほぼ一致した矩形断面柱については,付加物を取り付けることで,抗力が増加するものの,変動揚力が大きく低減することを確認した.その他,辺長比やスケールの異なる複数の矩形断面を対象に実験を行ったが,さらに多くの実験ケースを行い,付加物による流れ場の変化の特徴を整理し,空気力の変化に対して相関長さがどの程度影響しているかについても,さらに検討を進めていく必要がある. 熱線風速計による変動風速の測定ではセンサーを挿入することによる流れ場の影響が考えられるため,レーザードップラー流速計(LDV)による非接触の計測を行った.回転する円盤を用いたキャリブレーションを行い,本実験条件において精度が十分であることを確認したのち,基本断面である矩形断面柱の後流の変動風速の測定を行った.変動風速分布の形状など,既往の測定結果と対応した値が得られていることを確認した.ただし,現状では前方散乱の量が十分でなく流れの変動を把握するのに十分な時間解像度が得られていない. 遠方場の音圧については,変動空気力と相関の高い成分を確認した.
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今後の研究の推進方策 |
模型のスケールやアスペクト比を変化させた実験を行い,変動流れ場の特性を調べる.相関長さの評価には多くの測定ケースが必要で,コヒーレンスの値はパワースペクトルなどと比べてばらつきが多いため,初年度の実験ケースに加えて,種々の模型を対象に,風速,空気力,風圧力,音圧などの各種物理量の測定を行う予定である. また,LDVの後方散乱を用いた計測では,測定間隔が長くなり流れの周期的な変動を捉えるには不十分であったので,プリズムを設置し,前方散乱を用いた計測によって,時間刻みの細かい測定を行い,変動流れ場の把握を行う. 得られた測定データについて周波数分析を行い,空間的な相関について,相関係数やコヒーレンス,また提案した軸方向相関長さと流れ方向相関長さなどの指標で評価する.関連度の高い範囲について相関長さの定義を2次元に拡張した相関面積という指標による整理も検討する.また,多点の測定データを用いた相関の評価についても,POD解析やERA法などの手法を応用して,その評価手法の検討を行う. これらの検討を通して,軸方向に断面を変化させた付加物の形状や配置パターンのうち,耐風対策に効果のあるものを整理する.さらにバネ吊り試験を行い,実際に発振の抑制効果を調べる. 実験結果は,模型断面,付加構造物の形状の組み合わせに対して,種々の測定データを組み合わせたデータベースとして整理し,広く活用できるようにするために,任意のケースを比較検討することも可能なネット上のインターフェイスを構築する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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