平成26年度は,津波による橋桁の挙動を解明することを目的として,橋桁に作用する津波外力の作用メカニズムを水路実験および数値解析により検討した. 水路実験は,1/100スケールの水路模型を用いて実験を行った.本実験では,模型の横断勾配を変化させた場合の上部構造に作用する力を検討した.その結果,津波作用側を3°上げた場合,鉛直方向の津波外力は約10%低下するが,水平方向の津波外力は逆に10%程度増加することがわかった.今回の実験では数ケースのみの実施であったが,今後はさらにケースを増やして,上部構造の縦断勾配と津波外力の関係を定量的に評価できればと考えている. 数値解析は,差分格子ボルツマン法を用いて実験の再現計算を行った.水理実験は2次元であったため,解析においても2次元モデルを採用し,幅1600メッシュ,高さ110メッシュで作成した.模型は以前水路実験で用いた長方形断面模型とみぞ形断面模型をモデル化した.その結果,解析手法として差分格子ボルツマン法を用いることで,箱桁前縁側下面の負圧など,流れの剥離する部分の圧力を再現することができた.また,液相と気相を考慮した二相流解析を行うことで,みぞ形断面の桁間に生じる空気層とその働きを考慮することができたことから,差分格子ボルツマン法は,津波解析に有効な手法であることがわかった.しかし,津波作用直後の飛び跳ねた水や桁上面の圧力分布は水路実験の結果と異なる結果となった.これは,格子間隔が粗いことや,解析では完全な2次元解析なのに対して,水路実験は僅かに流れの3次元性があることが原因であると考えられる.そのため,格子間隔を細かくした解析(模型周辺部の格子間隔を細かくすることで,流況や模型に生じる圧力の整合性を向上させる)や3次元解析により,実際に津波が橋梁に作用する現象を精度よく再現できるようにする必要があることがわかった.
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