研究概要 |
H25年度は,H24年度に引き続き温度調整型溶質移動試験機を用いて,異なる温度環境(15℃,40℃条件)下で圧密・透水・溶質移動試験を実施し,地盤内の溶質移動を規定する主要な移動係数(透水係数,溶質分散係数,遅延係数)の温度依存性について調べた.トレーサーにはKCl溶液を用いた.試料には,模擬試料としてカオリン粘土試料と異なる深度から採取した埼玉県内荒川低地沖積粘土(1.5, 4.6, 17m深度)を用いた. カオリン粘土試料を用いて得られた透水係数測定値から,温度上昇により透水係数が増加する結果が得られた.また異なる温度条件下での透水係数については,水の粘性係数の温度依存性を考慮したKozeny-Carman式を用いて概ね予測可能であった.同じくカオリン粘土試料を用いて,温度上昇により溶質拡散係数が増大する結果が得られた.溶質拡散係数の温度依存性は,アレニウス式によって表現可能であることが分かった. 埼玉県内荒川低地沖積粘土を用いた実験の結果,土性の違いが溶質分散特性(溶質分散係数)に与える影響は大きく,粘性質で間隙率の大きい試料程低分散性を示した.温度変化による影響は小さいものの,一部の試料で温度上昇に伴い分散長は増加する傾向が見られた.温度上昇による水の粘性係数低下により、より微細間隙への流体移動が促進された可能性が挙げられるものの,現象解明に向けたさらなる追加実験が必要と考えられる.また,溶質移動試験から得られる遅延係数については温度上昇により低下する結果が得られた.
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