研究課題/領域番号 |
24760380
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
肥後 陽介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10444449)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 粒子法 / 地震 / 越流 / 浸食 / 堤防 |
研究概要 |
■地震動に対する安定性評価手法の開発 まず,研究者がこれまで開発してきた,MPM-FDM連成解析法を地震時の大変形応答解析のための解析法へと拡張した.初期剛性依存型および質量依存型のRayleigh減衰を導入すると共に,粒子が計算格子間を移動するような大変形時にも数値解析誤差を小さくできる一般化補間法のアルゴリズムを適用し大変形時の数値解析精度を向上させた.この解析法で,基本的な一次元波動伝搬問題,弾性体の自由落下および壁面衝突問題を解析し,それぞれ動的問題と大変形問題の解析時の安定性と妥当性を検証した. 次に,実際に淀川の改修に用いられている非塑性シルト質砂を用いて,最適含水比で締固めた堤防を作成した後に,河川水位上昇を模擬して水を浸透させ,浸透後に振動台により加振し,浸透を考慮しない場合と変形,間隙水圧,加速度応答の比較から,平常時と豪雨時などの高水位時の堤防の地震時安定性を検討した.入力地震動には,直下型地震を模擬した30秒,および海洋型地震を模擬した100秒の継続時間を持つ基本的なサイン波の地震波を用いた.さらに,兵庫県南部地震の観測波と東北地方太平洋沖地震の観測波を入力し,地震動のタイプによる堤防の安定性を検討した. ■越流に対する安定性評価手法の開発 越流水の堤防表面水平方向に作用するせん断力を摩擦から計算し,越流水と接する土の粒子に作用させ,骨格応力が0になった時点で浸食されるアルゴリズムを導入途中である.また,別途MPSの固定床に対する解析で求められた壁面衝突圧を入力とした浸食解析を本研究で開発したMPMで解析し,越流水圧によって法尻部の浸食が発生する解析に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既往の解析法を地震時の動的解析に適用可能とするための拡張を達成した.また,基本的な問題を通して解析法の妥当性を検証できた.また,遠心模型実験では,水位上昇時の堤防内部への浸透実験および浸透後の加振実験を実施した.これらは当初計画通りである. また,浸食のモデル化は流速からせん断力を求める手法の構築を当初計画通り実施したが,解析を実施するまでに至っていない.この理由としては流速を正確に求める重要性が認められたため,既往のアルゴリズムを改良し流速を陽に計算可能なものに変更したためである.ただし,別途MPSで計算された壁面衝突圧を用いた浸食解析は実施した. 以上の事から,浸食のモデル化が開発途中であるもののその他の点は当初計画通りに進展しているため,概ね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
■地震動に対する安定性評価手法の開発 平成24年度に実施した遠心模型実験のシミュレーションを動的解析法に拡張したMPM-FDM連成法によって実施し,浸透による応力状態の変化,液状化,変形の局所化などの観点から,浸透と地震動による複合的な破壊メカニズムを解明する.また,遠心実験結果とそのシミュレーション結果を比較し,解析法の妥当性を検証する.また,ひずみが小さい領域では,有限要素法の結果との比較から,提案法の適用性を検討する. 次に,2011年東北地方太平洋沖地震でも見られた被害状況であるが,堤防の沈下による閉封飽和領域の液状化に起因とする堤防の大変形問題の解析を実施する.具体的には,堤防の沈下で堤防の下部に飽和領域を持つモデルと飽和領域をもたない堤防を対象に,継続時間の長い地震動を入力した解析を実施し,堤防の地震時安定性を検証する. ■越流に対する安定性評価手法の開発 越流水の流れを解析するため,運動方程式に粘性項を考慮したNavier-Stokes式をMPMで定式化し,圧縮性粘性流体解析法へと拡張する.粘性項は弱形式化し,計算格子の形状関数で解法する.さらに,乱流を解析するためReynolds方程式へと拡張する.MPSによる固定床の越流解析と同じ解析をMPMによって実施し,結果の比較から拡張解析法の適用性を検証する. 次に,拡張した解析法に浸食モデルを導入し,河川水の越流,越流水による浸食,浸食による堤防形状の変化,堤防内への浸透と浸透による変形を連成したマルチフィジックス解析法に拡張する.これを用いて,越流の模型実験をシミュレーションし,提案解析法の妥当性を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
遠心模型実験で平成24年度に得た結果の再現性の確認のための実験に消耗品費として研究費を使用する.また,解析に必要な消耗品費および計算機使用料を使用する.さらに,データ保存等のための記憶媒体を購入する. 国内でH24年度に得られた研究成果を発表し情報収集を行うための旅費を使用する.また,国際学会に出席し,最新の知見を収集する. 実験及び解析の補助のための謝金として研究費を使用する. 研究期間の最後には,成果を発表するための論文作製に研究費を使用する.なお解析データ整理のためのソフトウェアを購入する.
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