■地震動に対する安定性評価手法の開発 まず,研究者がこれまで開発してきた,MPM-FDM連成解析法を地震時の大変形応答解析のための解析法へと拡張した.初期剛性依存型および質量依存型のRayleigh減衰を導入すると共に,粒子が計算格子間を移動するような大変形時にも数値解析誤差を小さくできる一 般化補間法のアルゴリズム(GIMP)を適用し大変形時の数値解析精度を向上させた. 次に,飽和した基礎地盤と不飽和堤防をモデル化し,地震時の動的解析を実施した.解析手法の適用性を検証するため,既に実績の多い有限要素法(FEM)で同条件の解析を実施し,結果を比較した.また,一般化補間法の効果を検証するためオリジナルのMPMによる解析結果と新たに開発したGIMPによる解析結果を比較した.これらの比較解析の結果,提案手法であるGIMP-FDM連成法は数値消散が軽減された妥当な解を得る事ができる事を確認した. ■越流に対する安定性評価手法の開発 越流による堤防の浸食および浸透作用を解析するためのアルゴリズムを提案し,基本的な問題によりその適用性を確認した.具体的には,越流水の挙動をナビエ・ストークス式で定式化しこれをHighly Simplified MAC(HSMAC)法で解法すると共に,土中の水の流れをダルシー則で記述した多相連成解析法であるGIMP-FDM解析法によって解法した.ストークス流れとダルシー流れの境界では,それぞれHSMAC法とGIMP法の仮想セルで互いの水圧を交換する単純で無理のないアルゴリズムを採用した.解析例として,土と接した流体層における2次元キャビティ流れを解析した.その結果,キャビティ流れを再現すると共に水が不飽和土中へ浸透する現象を解析する事に成功した.また,土の水の境界を完全粗面と仮定し等価粗度を用いて境界における摩擦速度を求めた.これは,浸食を引き起こす掃流力に相当し,これを摩擦力として固体相へ作用する事により,浸食解析へ拡張可能である事を示した.
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