研究課題
土の粒度等の情報を基に土粒子間の微視的な力のつり合いに確率論的考察を加え,降雨に伴う土壌侵食の評価手法を開発した。具体的には降雨量から地中浸透量を減じ表流水量を求め,粒子接点での力のつり合いから流出粒子の最大径を導き,粒径加積曲線における通過質量百分率を確率として,表層体積に乗じることでリスク値として評価した。一方で国頭マージ土壌について,降雨装置を用いた土壌侵食実験,霧吹きを用いた表層せん断試験を行い検討した。土壌侵食試験では時間雨量30mmでは提案手法と良好な関係を得られたが,時間雨量60mm,90mmでは差異がみられ,粒子接点力の評価等について,実現象再現のための課題が抽出された。表層せん断試験では,霧吹き回数0~600回(含水比0~20%)での表層粘着力,表層内部摩擦角を計測した。その結果,表層粘着力は含水比13%まで上昇したがその後一定値を示した。表層内部摩擦角は霧吹き回数によらず概ね一定を示し,降雨依存がみられなかった。また,締固め度を変えて表層粘着力と飽和度関係を調べると,飽和度約60%で表層粘着力がピークを示した。このことから,表土流出抑制に最適な表層粘着力に維持するには表層飽和度の管理が必要といえる。一方、沖縄県宜野座村の農地(国頭マージ土壌)で種々の適応策条件(裸地,放棄地,敷き砂,敷き草,微生物,堆肥,グリーンベルト)下で土砂流出の現地実験を1年以上に渡り実施した。植生(放棄地,グリーンベルト)や敷き砂が流出を顕著に抑制した。植生や敷き砂は土砂の捕捉効果と共に,自発的な吸水・排水により表層飽和度を管理している。捕捉効果は設置方法(植え方や砂層の厚さ等)の依存度が大きいが,表層飽和度管理には根茎や土の保水性・透水性が影響する。今後,豪雨時の粒子接点力評価と共に,根茎や土材料の土砂流出抑制効果を保水性や透水性から定量的に評価することが課題である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 9件) 備考 (3件)
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