研究課題/領域番号 |
24760385
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研究機関 | 独立行政法人土木研究所 |
研究代表者 |
日下 敦 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 主任研究員 (60414984)
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キーワード | トンネル / 耐荷力 / 補強 |
研究概要 |
トンネルに過大な外力が作用し,当初施工した支保工や覆工(本研究では「当初支保」と呼ぶ)のみでは地山の安定性が確保できないと判断された場合は,吹付けコンクリートや鋼アーチ支保工あるいは内巻きコンクリート等による補強工が施工されることがある。しかし,補強工の規模を検討する際は,既に損傷を受け,大きなひずみが発生している当初支保が補強後に分担し得る荷重が不明確であることから,経験的な知見に依るところが多いのが現状である。本研究は,当初支保に大きなひずみが発生した後に補強工を施工した場合の全体の力学挙動について検討を行うものである。 平成25年度は,前年度に行った要素実験により,当初支保のポストピーク特性が補強後の全体耐力に重要な役割を果たすことが分かったこと等を踏まえ,主としてひずみ硬化/軟化といった降伏後の材料特性をコントロールできる数値解析による検討を行った。 まず,一軸圧縮状態において,当初支保にひずみが生じている状態で補強工を設置した場合の全体の耐荷力について,ひずみ硬化/軟化モデルを用いて要素実験の再現解析を試みたところ,当初支保単体の耐荷力や,補強後の全体の耐荷力について整合性の良い結果が得られた。続いて,軸圧縮力に加えて曲げモーメントも作用する覆工コンクリートの実大規模の既往の載荷実験を対象として,同様の数値解析モデルを用いて再現解析を試みたところ,構造全体の耐荷力と,構造全体の破壊に至る過程を良好に再現することができた。 これらの結果から,上記検討で用いたひずみ硬化/軟化モデルを用いた数値解析により,当初支保の耐荷力や補強後の全体の耐荷力の検討が行える可能性があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年度に実施した要素実験の検討結果を踏まえ,より実形状に近いモデルでの検討を行うことを予定していた。 本年度の検討結果により,実大規模のトンネルの当初支保の耐荷力が数値解析により検討できる可能性があることが明らかになったとともに,補強後の全体耐力についても要素実験レベルでの再現ができたことから,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
過年度に実施した実験結果や数値解析結果を踏まえ,実トンネルスケールにおける補強後の構造全体の耐荷力および破壊に至るメカニズムを検討する。検討手法は主として数値解析によるものを予定しているが,数値解析結果の分析等を踏まえ,模型実験の実施についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は模型実験により検討を行うことを予定し,実験に要する計測機器や供試体の購入等に予算を使用する予定であったが,数値解析により模型実験が代替できる可能性があることが分かったため,本年度の実験に要する費用を翌年度に繰り越すものである。 前年度までに得られた要素レベルの実験や数値解析,実大規模の数値解析の結果等を踏まえ,より実構造に近い供試体を用いた載荷実験にかかる物品費や,実施工データの分析等にかかる謝金,成果の公表にかかる旅費等に使用する予定である。
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