トンネルに過大な外力が作用し,当初施工した支保工や覆工(本研究では「当初支保」と呼ぶ)のみでは地山の安定性が確保できないと判断された場合は,吹付けコンクリートや鋼アーチ支保工あるいは内巻きコンクリート等による補強工が施工されることがある。しかし,補強工の規模を検討する際は,既に損傷を受け,大きなひずみが発生している当初支保が補強後に分担し得る荷重が不明確であることから,経験的な知見に依るところが多いのが現状である。本研究は,当初支保に大きなひずみが発生した後に補強工を施工した場合の全体の力学挙動について検討を行うものである。 平成26年度は,前年度までに行った実験や数値解析による検討により,当初支保の耐荷力や補強後の全体の耐荷力の検討が行える可能性があることが明らかとなったことを踏まえ,解析モデルを実トンネルスケールに展開し,実際のトンネルにおける補強効果やそのメカニズムについて検討した。解析はコンクリートの材料非線形挙動を考慮し,当初支保の破壊過程も考慮して荷重分担率や構造全体の耐力等について検討した。 その結果,既にひずみが発生している当初支保も補強後にある程度の荷重を分担することにより,全体の耐力は当初支保単体や補強工単体の耐力を上回る可能性があることが明らかとなった。
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