研究課題/領域番号 |
24760388
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
横尾 善之 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (90398503)
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キーワード | 貯留量 / 河川流量 / タイ / 大流域 / 土砂災害 / 活断層 |
研究概要 |
本研究は,河川の毎時の流量観測データを用いて,流域スケールの雨水貯留量の変動および貯留能を推定することを目的とし,水資源の有効利用や洪水・土砂災害に資する科学的知見の発信を目指している. 本年度は,国際研究プロジェクトを進めているタイ気象局およびタイ灌漑局の研究者から河川流量データの提供を受け,1,000平方km程度の大きな流域を対処としてKirchner (2009)の手法の適用性を検討し,日本およびタイの流域の貯留能と流域の気候・地理条件の関係の検討を当初から計画していた. この計画に沿って,本研究はタイ北部のYom川およびNan川の2流域を対象として,昨年度までに開発したHino & Hasebe (1984)の河川流量の成分分離手法とKirchner (2009)を組み合わせた本研究独自の流域スケールの雨水貯留量推定法 (Kobayashi & Yokoo, 2013)を適用した.その結果,流域面積が大きいが夜間の蒸発散量が大きくない上述の2流域においては,本手法が適用できることが分かった.さらに,本手法で推定される複数の要素からなる雨水貯留量の一部が大きくなると土砂災害が発生していることが分かり,本手法は豪雨時の土砂災害のリスク推定に応用できる可能性が示された.また,大規模活断層があると雨水貯留量が大きくなる可能性も見出された.以上の成果はYokoo et al. (2014)に掲載した.なお,雨水貯留量と土砂災害のリスクの関係は日本の流域でも確認されている(小林・横尾,2014). 以上のように,本年度はほぼ計画通りに研究が進展し,成果を上げることができた.しかし,推定手法には未だに改善を必要とする点があるため,それらを整理・改善することが今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度に本研究が独自に開発した流域スケールの雨水貯留量推定法を国際共同研究を進めているタイの流域に適用し,1,000平方km程度の大きな流域での本手法の適用性を確認することを計画・実行した.その結果,流域面積5,394平方kmのYom川上流域および流域面積3,476平方kmのNan川上流域でも本手法を適用することが可能であることを確認した.さらに,本研究の雨水貯留量の推定値は土砂災害のリスクおよび大規模活断層の存在と関係していることが分かり,本手法の妥当性が示された.このため,「おおむね順調に進展している」と判断した. しかし,本研究の手法に改善点が残っていることも事実である.Hino & Hasebe (1984)の手法とKirchner (2009)の手法を単に組み合わせて使うには部分的に理論の不整合があり,改善方法を模索する必要がある.この点は最終年度の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究結果から,Hino & Hasebe (1984)の手法とKirchner (2009)の手法を組み合わせて使う本手法の技術的課題が明らかになっている(小林・横尾,2014).次年度はこの点にまず着手し,技術的課題を解決する予定である. そこで本研究は,この問題と当初の研究計画を合わせ,①雨水貯留量推定法における技術的課題の克服,②蒸発散量が大きい流域への適用方法の検討,③流域の貯留能と気候・地理条件との関係の検討,の3つの課題に取り組む予定である.
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