研究課題/領域番号 |
24760390
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
相馬 一義 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (40452320)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局地的大雨 / 雲解像モデル / 都市環境 / エアロゾル / 大気陸面相互作用 |
研究概要 |
近年,都市域での短時間強雨による深刻な被害が多発しており,都市特有の環境が影響している可能性が指摘されている.研究代表者らは短時間強雨予測に用いられる雲解像気象モデルに,都市域での人工的土地被覆・人工排熱に伴う加熱の強化,高層建物による摩擦の強化を導入してきたが,さらに大気汚染に伴うエアロゾル(大気中の微粒子)の影響を加え,短時間強雨予測の精度向上を図ることが本研究の目的である. 研究項目「1.エアロゾルを含む都市環境を包括的に考慮した雲解像気象モデルの開発」に対して,都市域での人工的土地被覆・人工排熱を考慮可能な雲解像気象モデルCReSiBUCの改良に取り組んだ.具体的には,大気モデルについて従来使用してきたCReSSver2.2から,エアロゾルの直接・間接効果を表現するために必要な詳細な大気放射過程・雲物理過程を考慮したCReSSver3.4への更新を行った. 研究項目「2.最先端の観測データを用いたモデルの検証」に対して,京阪神で実施中の局地的大雨集中観測データと比較した検証を目指して,大阪における空間解像度2kmの局地的大雨再現計算(2006年8月22日;2011年8月27日)を行い,気象庁による観測データと比較して検証を行った.再現計算を行う過程で,大阪市におけるレーザー測量に基づく建物高さ分布・一人当たり平均エネルギー消費量と人口分布に基づく京阪神神地方における人工排熱量分布など都市環境データを整備した. さらに研究項目「3.エアロゾル濃度と都市加熱・摩擦の増加が短時間強雨予測に与える影響評価」に対して,都市域を仮想的に水田に変えて都市加熱及び摩擦を減少させた数値実験を行った.結果を再現計算と比較したところ,特に2011年の局地的大雨について都市加熱及び摩擦が降水を強化した可能性を指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.研究項目「1.エアロゾルを含む都市環境を包括的に考慮した雲解像気象モデルの開発」に対して,エアロゾルの直接・間接効果を表現するために必要な詳細な大気放射過程・雲物理過程が導入されたこと. 2.研究項目「2.最先端の観測データを用いたモデルの検証」に対して,2011年より京阪神で実施中の局地的大雨集中観測データとの比較へ向けた代表的事例(2011年8月27日)を抽出し,いまだ検討の余地はあるが建物高さ分布・人工排熱量分布など都市環境データを整備して再現計算を行い気象庁の観測データと比較検証したこと. 3.研究項目「3.エアロゾル濃度と都市加熱・摩擦の増加が短時間強雨予測に与える影響評価」に対して,限られた事例のみとはいえ,都市加熱と摩擦の増加が与える影響を指摘したこと. による.
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今後の研究の推進方策 |
研究項目「1.エアロゾルを含む都市環境を包括的に考慮した雲解像気象モデルの開発」に対して,全球エアロゾル気候モデルSPRINTARSによるエアロゾル分布推定値を取り込み,エアロゾルが放射に与える直接効果と,凝結核及び氷晶核として雲水・雲氷の生成を助ける効果を組み込む.この項目については名古屋大学との情報交換をより一層強化して研究の効率化を図る. 研究項目「2.最先端の観測データを用いたモデルの検証」に対して,これまでに再現計算を行った事例に加えて,特に京阪神における局地的大雨集中観測開始後の2011年以降の事例をより多数抽出して再現計算を行うことで,現在得られている結果の一般化を図る.新たに神戸市の建物高さ分布を導入するなど,より現実的な都市環境データ(建物高さ分布・人工排熱量分布等)の導入を併せて行う. 研究項目「3.エアロゾル濃度と都市加熱・摩擦の増加が短時間強雨予測に与える影響評価」については,現時点でのモデルで仮定している一様なエアロゾル量を変化させた数値実験をモデル改良と並行して行い,都市加熱・摩擦の増加との比較を前倒しして行うことを検討する. 各研究項目とも,今年度は昨年度よりも計算機資源が必要となることが予想される.現在雲解像気象モデル計算で使用している山梨大学のPCクラスターに加えて,京都大学・名古屋大学の大型計算機にモデルを適用できるよう改良を加えて対応する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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