研究実績の概要 |
近年,都市域での短時間強雨による深刻な被害が多発しており,都市特有の環境が影響している可能性が指摘されている.研究代表者は短時間強雨予測に用いられる雲解像気象モデルに,都市域での人工的土地被覆・人工排熱に伴う加熱の強化,高層建物による摩擦の強化を導入してきた(CReSiBUC; Souma et al., 2013)が,さらに大気汚染に伴うエアロゾル(大気中の微粒子)の影響を加え,短時間強雨予測の精度向上を図ることが本研究の目的である.平成26年度の実績を以下にまとめる. 研究項目「1.エアロゾルを含む都市環境を包括的に考慮した雲解像気象モデルの開発」に関して,以下のようにモデル開発を行った.まず,全球エアロゾルモデルSPRINTARS(Takemura et al., 2005)によるエアロゾル数密度(単位体積の空気内に存在するエアロゾルの個数)予測結果について,3次元線形補間を行った後に平滑化を行い,雲解像気象モデルの計算格子点に内挿するプリプロセッサを作成した.さらにLohmann et al. (2000)を参考として,エアロゾルが凝結核として降水に与える影響をCReSiBUCに導入した. また,研究項目「2.最先端の観測データを用いたモデルの検証」,「3.エアロゾル濃度と都市加熱・摩擦の増加が短時間予測に与える影響評価」に対して,2012年8月18日の大阪市で発生した局地的大雨を対象に開発したモデルを適用した.エアロゾル数密度分布を考慮した場合と考慮しない場合とで,2つの数値実験を行った.その結果,エアロゾル数密度分布を考慮した実験では降水量が大阪南部で増加し,日本のように水蒸気量の豊富な地域では,エアロゾルの影響により降水が強まる事例がある可能性が示唆された.
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