研究課題
本研究では研究代表者が開発してきた「広域・領域洪水予測モデル」に並列化を施し,高速リアルタイム計算を可能とするための基礎研究を実施することが目的であった.本研究では,まず250m解像度(総節点数427×565=241255)の淀川分布型降雨流出・洪水氾濫モデルを開発した.この洪水モデルは降雨流出過程と洪水氾濫過程を同時に追跡することを目的としたモデルである.研究開始時は,現在市販最速クラスCPUのIntel Xeonを用いてもシミュレーション1時間の計算に5分半程度必要であった.しかし,まずOpen MPによるスレッド並列化を実施し,14コアで1分30秒程度にまで計算時間を短縮した.その後,「次世代スーパーコンピュータ戦略プログラム」との連携により京コンピュータにも淀川モデルを移植し,浸水・河道計算両面での並列化により,シミュレーション1時間の計算時間を数10秒にまで短縮した.詳細に検討が必要な項目がいくつかあるため,期間内に並列化に関する論文発表はできなかったが,今後公表していく予定である.また,同時に淀川モデルと気象庁の1kmメッシュ解析雨量GPV及び6時間先までの時間降水量予測値1kmメッシュ降水短時間予報GPVを入力とするリアルタイム洪水予測システムのプロトタイプを開発した.このシステムにより,洪水リアルタイム計算の基礎的な検討が可能となった.データの蓄積と予測成功事例が必要なため,論文発表はできなかったが,随時公表していく.その他,関東,中部地方の流出・氾濫モデルのプロトタイプ開発,マルチエージェントモデルに基づく避難行動モデル(西宮市避難訓練データを用いて検証)作成も実施した.しかしながら,全般的に淀川モデル及びこれに基づく洪水予測システム開発が科研費研究成果として最も意義が高いと判断し,本実績概要としては主にこの点について強調する.
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土木学会論文集B1(水工学)
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Journal on Food, Agriculture and Society
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Proceedings of the 35th IAHR world conference
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河川技術論文集
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