本研究は、第3世代波浪推算モデルWAMのエネルギーソース項のうち、風から波へのエネルギー輸送に関する海面抵抗係数の風速依存性に着目し、WAMにデータ同化手法 (4次元変分法)が組み込まれた波浪推算モデル(ADWAM)を仮想の観測装置とすることで、全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス)により、2時間間隔で提供されている潮岬の有義波高の時系列データを観測値として、風速別の海面抵抗係数を推定したものである。 初年度はデータ同化の現地適用について試行を実施し、現地への適用が可能なモデルであることを確認するとともに、妥当な推定結果が得られる計算条件を明らかにした。また、強風の発生域から離れた観測点の波浪を観測値としてデータ同化実験を行った場合であっても、強風域で発生し伝播してきたうねりが観測されていれば、データ同化により強風速範囲の海面抵抗係数が推定可能であることを明らかにした。さらに、2004年から2008年までの5年間の潮岬における推算波高をNOWPHASの観測波高と比較し、波高が精度良く再現できている気象擾乱事例を抽出した。 2年目である最終年度は、できるだけ多くの擾乱事例を対象にデータ同化を実施し、結果として複数の擾乱事例において、任意に設定した複数の初期値からほぼ同様の推定結果を得ることができた。さらに、風速30m/s以下の風速範囲については、従来、利用されているMitsuyasu・Hondaの式が概ね妥当であることが確認できた。
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