研究実績の概要 |
東京湾沿岸部の4地点に設置した計12台の屋外ネットワーク可視カメラから東京湾上空および都心部上空の大気の連続観測を実施した.平成25年を対象とした統計解析により,以下のことがわかった.(1)都市上空大気の層構造:夏季(7~9月)において地上から雲の流れを観察した結果,2~3層構造を成している様子が捉えられた.上層の雲の流れは衛星画像による雲の流れと対応しており,下層の雲の流れは地上風向と対応していた.(2)都市域の降雨と雲の流れの関係:都心部付近において,夏季降雨前には南寄りの風(雲)が下層で連続的に流入する傾向にあることがわかった.(3)視程と浮遊粒子状物質(SPM)の関係:都市上空では夏季にSPM濃度が高い傾向にあった.夏季は南寄りの海風が卓越しており,沿岸部に立地する工場等から排出される人為起源エアロゾルや海塩粒子により大気が混濁しやすくなる可能性が考えられる.また,大気が混濁している状態(見通しが約3km程度)ではSPM濃度は平均で45μg m-3に達していた.(4)大気境界層高度日変化の推定:大気境界層内の混濁具体の変化から境界層高度は明け方低く昼間に高くなるという時間変化を示すことが確認され,夏季日中には約1,500m程度まで発達していると推定された. (1)で記した通り,上空の雲の様子は衛星画像からも把握することが可能であるが,層構造を成している場合は下層の雲(大気)の流れを捉えることは困難である.一方,(2)の通り都心部付近においては下層に南風が連続的に流入することが降雨の要因の一つである可能性があり,地上付近の雲の流れを捉えることは重要であるといえる.本研究では“地上から空の様子を連続観察する”ことから都市上空大気の実態把握を試み,上記の通りいくつかの知見を得ることができた.これらの結果は,気象学会,国際都市気候会議等において発表する予定である.
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