研究課題/領域番号 |
24760403
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
田村 仁 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (80419895)
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キーワード | 短波重力波 / スペクトル形状 / エネルギーバランス / 非線形散逸項 / 合成開口レーダ / 衛星画像 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
短波重力波および表面張力波領域における海洋波は、ピーク領域と比較して無視できるほどエネルギーレベルが低いものの、大気海洋相互作用における運動量・物質交換には極めて重要である。本年度の研究では現地観測データおよび第三世代波浪モデルに基づき、短波重力波(以下SG波)領域における物理特性を解析した。 SG波は吹送流やうねりに伴う軌道流速によるドップラー周波数シフトの影響を容易に受ける。そのため通常の定点ブイ観測で得られる周波数スペクトルから分散関係を仮定して推定される波数スペクトルの解釈には注意が必要となる。本研究ではマイアミ大学で開発されたASIS buoyによって計測された水位変動に対し、Donelanら(1996)によるWavelet Directional Methodを用いで波数スペクトルを直接推定した。また、観測を対象に第三世代波浪モデルWW3を用いて波浪ハインドキャストを行った。ソースバランスを検討するために通常用いられるスペクトルtailは使用せず、ソース項から直接スペクトル形状を計算した。 観測結果より波数が2 (rad/m)以上では、飽和スペクトルB(k)の値は風速に対して飽和しつつあり、波数10ではほぼ一定の値を取ることがわかる。これらの結果はBannerら(1989)が示したB(k)の勾配レンジに収まっていることからも、観測データおよび解析手法の妥当性が確認でされた。デフォルト波浪モデル結果はSG波領域でのB(k)を大幅に過大評価しており観測結果の再現性は極めて低い。一方で波浪モデルの改良として、Donelanら(2012)によって提案されている非線形散逸および水理学的変調の影響を取り込んだ砕波散逸項を用いた結果、スペクトル形状の再現に成功した。このことから砕波散逸パラメタリゼーションがSG波領域でのソースバランスに極めて重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である”合成開口レーダ画像解析のための衛星シミュレータ開発”に向けて、現場観測データおよび海洋波モデル開発をおこない、L-band波数帯における短波重力波の物理的理解が大幅に進展した。これらの知見に基づき、第三世代波浪モデルの改良に成功しJAXA/ALOS画像の定量的理解が進んだ。また、これらの結果をまとめ国際ジャーナル(JGR-Oceans)に論文投稿を行い、現在改訂中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのJAXA/ALOSアーカイブと波浪ハインドキャストを進めることで、PALSAR画像の定量的解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
独立行政法人宇宙航空研究開発機構との共同研究「拡張波浪モデルとPALSAR/PALSAR2 画像による海洋サブメソスケール現象解析」(2013/05/13 - 2016/03/3)が採択されたため、PALSAR画像の購入費が軽減されたため 研究成果の学会発表、および論文出版に係る費用に補充する
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