研究課題/領域番号 |
24760405
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大窪 和明 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (50546744)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 静脈物流 / ロバスト最適化 / 在庫 / 小型家電製品 |
研究概要 |
本研究では小型家電の回収量に不確実性がある状況下において,Bertsimas and Thiele(Operations Research,Vol.54,No.1,pp.150-168,2006) などによって研究されてきたロバスト最適化手法を参考に,中間処理業者が想定する不確実性の範囲を変えたときの利潤の変化を明らかにした.具体的には,1種類の小型家電から複数の再生資源を抽出することが可能な状況を考え,各期における小型家電の正確な回収量がわからない状況下において,中間処理業者がリサイクルの計画を立て,行動した場合の利潤の性質を明らかにした. その結果,標準的な最適化手法よりも,回収量を少なく想定したロバスト最適化手法の方が平均的な利潤が高くなるだけでなく,リサイクルから排出される残渣の最終処理量も少なくなることが明らかになった.またバリュー・アット・リスクや条件付きバリュー・アット・リスクといったリスク指標を計算することにより,不確実性のある現象に対して最悪ケースを想定した従来のロバスト最適化手法では必ずしもリスクが最小になっていないことを定量的に明らかにした.さらに,ロバスト最適化手法の適用によって,将来の回収量の減少に備えて在庫を増やすため,リサイクルから排出される残渣だけでなく,有用資源の抽出量も少なくなってしまうことも明らかになった.そのため,今後は回収量の不確実性によって生じる損失を抑えつつ,より多くの有用資源を回収できるような仕組みを考えることの必要性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時に計画していた基本モデル(1つの使用済み小型家電製品から複数の再生資源を抽出し,各再生資源市場へ販売する中間処理業者のモデル)を定式化し,多期間,多財の設定のもとで,ロバスト最適化問題と名目値最適化問題の最適解を導出し,シミュレーションを用いて,最適解の性質を比較分析した.その結果,上記の研究実績で示すように,ロバスト最適化によって中間処理業者の平均的な利潤が高まるだけでなく,リサイクルから排出される残渣も少なくなることが示され,当初の目的は達成できた.さらに,ここまでの研究成果を土木学会論文集に投稿し,現在,査読結果を待つ段階である. 今回の研究成果は,自治体と中間処理業者の事前の交渉によって排出量の不確実性による悪影響を弱めるような制度への応用が期待されるなど,持続可能な回収システムの構築に向けた新たな発展方向性も考えられており,おおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に定式化した基本モデルに,未だ確立されていないリサイクル技術の導入を考える.具体的にはリサイクル企業が再生資源を抽出する際,固定費用が必要になる場合を考える.はじめは小型家電製品から再生資源が2種類だけ抽出でき,2期間の設定といったシンプルな設定の下での定性的な性質を明らかにする.その後,具体的な数値計算を行う. またロバスト最適化の手法の適用においては,将来の回収量の減少に備えて在庫を増やすため,リサイクルされない残渣の排出量だけでなく,再生資源の抽出量も少なくなってしまうことが課題であり,回収量の不確実性によって生じる損失を抑えつつ,より多くの有用資源を回収できるような仕組みを考えていく.そのために,ロバスト最適化問題を解く際に定式化されるサブ問題の社会的意味について考察を深めていく予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,動的な混合整数計画問題の最適化が必要で膨大な計算量が予想されるため,新たな計算機または最適化計算を行うための最新のプログラムの購入を予定している.またリサイクル,最適化手法,企業立地関連の最新の研究動向を把握する必要があることから書籍の購入費が必要となる.また今年度の後半には,国内外の研究発表会や研究者に対して積極的に研究成果の報告や意見交換を予定しており,そのための旅費や意見交換を円滑に行うためのPC周辺機器等が必要となる.また,現在,投稿中の論文や,今年度の研究成果報告のための国内外の専門誌への論文投稿料,英文校正の費用が必要となる.
|