研究課題/領域番号 |
24760407
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
及川 康 東洋大学, 理工学部, 准教授 (70334696)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 避難行動 / 国際情報交換 / タイ |
研究概要 |
本研究課題は、洪水発生時における人的被害の軽減を目的に、住民の緊急避難の促進方策について、主として「住民のいまがそのときとは思えない心理特性を背景とした、曖昧で不安の状況を回避するための情報収集行動」ならびに「盗難リスク等への社会不安や災害後における生計再建の支援保証に関する社会システムへの信頼」といった、従来研究では統一的に取り扱われ難かった要因を明示的に考慮したうえでの検討を行うものである。とりわけ後者の要因を検討するには、先進諸国と開発途上国との国際比較研究が重要との認識のもと、そのケーススタディとして日本とタイの比較研究を行うものである。このうち平成24年度においては、下記についての検討等を実施した。 1.住民避難に至る心理プロセスにおける影響要因の整理:既存研究をレビューするとともに、想定され得る影響要因についてロジットモデルとして記述することを試みた。 2.住民避難問題に関する客観的状況の把握:本研究では、日本(先進国)とタイ(途上国)を主に対象とする。具体の都市については、開発途上国としては2011年10月の洪水の被災地でもあるバンコクを念頭に置いている。一方、日本については、河川洪水による浸水被害が想定される地域を予定しており、洪水ハザードマップが公表されている地域において実施することを考えている。 3.タイ(バンコク)における洪水被害の現地踏査:平成24年度においては、バンコクの現地に出向き、2011年10月以降の洪水被害の実態についての基礎的情報を収集すべく、関係者とのヒアリングおよび打ち合わせを行った。 4.意識調査方法の検討:平成24年度における検討事項を踏まえ、アンケート調査票の内容のみならず,その配布方法・回収方法について、各国の実情を踏まえて検討を行ったうえで実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に予定していた4項目については、下記の通り概ね予定通りに進行されている。 1.住民避難に至る心理プロセスにおける影響要因の整理:住民避難に至る心理プロセスに影響をもたらす要因を実態に即したかたちで把握するためには、既存研究における多くの知見の蓄積があると同時に、それのみでは必ずしも十分ではないことが想定される。したがって、まず、これらの要因の影響の仕方について、国内外の既存研究をレビューするとともに、想定され得る影響要因についてロジットモデルとして記述することを試みた。 2.住民避難問題に関する客観的状況の把握:本研究では、日本(先進国)とタイ(開発途上国)を主に対象とする。具体の都市については、開発途上国としては2011年10月の洪水の被災地でもあるバンコクを念頭に置いている。一方、日本については、河川洪水による浸水被害が想定される地域を予定しており、洪水ハザードマップが公表されている地域において実施することを考えている。次年度において実施する調査の対象地域については、次年度内に発生した洪水被害の発生状況をも踏まえて選定を行う。 3.タイ(バンコク)における洪水被害の現地踏査:上記2にも関連するが、具体の被害実態を把握したうえで、アンケート調査は設計されることが肝要である。したがって、平成24年度においては、バンコクの現地に出向き、2011年10月以降の洪水被害の実態についての基礎的情報を収集すべく、関係者とのヒアリングおよび打ち合わせを行った。 4.意識調査方法の検討:平成24年度における検討事項を踏まえ、アンケート調査票の内容のみならず,その配布方法・回収方法について、各国の実情を踏まえて検討を行ったうえで実施する。なお、本年度に予定していたプレ調査の実施には至っていないため、これについては次年度に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、下記事項に関する検討等を行う。 1.本調査の実施:前年度で予定していたプレ調査が実施できていなかったので、その必要性の判断も含めて今年度に実施する。そこでの検証作業を経た上で、両対象地域の住民アンケート調査を実施する。 2.住民避難に至る心理プロセスのモデル化の分析:以上のようにして得られた住民のアンケートデータに基づき、前年度にて検討を加えた方針に則り、住民避難に至る心理プロセスの要因分析やモデル化を行う。無論、ここにおいて、当初は想定していなかった要因や影響などが発見された場合には、それに応じたモデル化を行うこととなる。むしろ、そのような事態は、ハプニングというよりも発見であり、より実態に即した検討を可能にするものである。 以上のようなプロセスを経て、議論を先進諸国に限定しない、一般論としての災害発生時における住民の避難行動意思決定モデルの構築を試みるとともに、このような行動モデルのパラメータ推定を介して、種々の直接的・間接的な住民避難誘導方策がどれ程の人的被害の軽減化に繋がり得るのかの定量的評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していたプレ調査の実施を次年度に見送ったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。これは、平成24年度内のタイ・バンコクでの現地打ち合わせの中での、アンケート調査の実施方法についての関係者とのディスカッションを踏まえてのものである。このほかに平成25年度においては、本調査の実施に関する諸経費とタイ・バンコクへの渡航費などを計上している。
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