研究課題/領域番号 |
24760410
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
出村 嘉史 岐阜大学, 工学部, 准教授 (90378810)
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キーワード | 近代地方都市 / 土地区画整理事業 / 法定都市計画 / 岐阜 / 地方自治 / 市区改正 |
研究概要 |
本研究は、近代地方都市の典型として、岐阜の都市形成の原理を明らかにすることを目的としている。すなわち、これまでに知られている官による都市建設とは全く異なる、地方独自のプロセスがあったことを解明することである。従来の都市形成に関する研究の多くは、大都市を対象として都市計画法などの制度に基づく形成プロセスを示すものが多く、本研究のような地方都市をとりまく社会的・物理的要因を考慮した解析例は報告されていない。本研究は、日本の都市形成論における新しい領域を拓く試みである。 そのために実際の実施主体とその働きを、公的資料や古文書などの史料から調査・解析した。行った手順としては、1)資料収集、2)資料解読(必要な部分は翻刻した)、3)整理・分析を進め、本年度明らかにする目標であった、法定都市計画開始時(大正末期以降)における都市建設をめぐる主体・その意図や技術・資本、そして成果として得た都市構造に関する実態を実証できた。その他、周辺事象を把握するために、大垣市や一宮市にも着目している。 把握された主な事象は以下の通り。都市計画導入期の岐阜市は当初、産業(工業)都市として発展することを目指していた。工業の便を講じる必要があり、岐阜駅を中心として東西郊外との連絡を図る街路計画が立てられた。一方、財政難により、郊外の街路整備は土地区画整理を利用することが考えられた。しかし、土地区画整理の事業地では工業を優先した都市計画地域指定と異なる将来構想が計画される。計画された街路は着実に土地区画整理事業の手法によって建設が進められる一方、同手法は岐阜市の住環境建設の手段となった。ここに自治的イニシアティブが発揮された可能性を探ったが、この時点では行政主導が著しく強くなっており、全国基準の都市計画を着実にこなす姿となっていた。ボトムアップ的な都市形成からの移行期はこの前の時代であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り、今年度に明らかにしたい内容は、実証することができた。その上で、前年度に明らかにした自治の状況との間には、社会背景的に大きな断絶があることがさらに把握された。 前年度に把握した、二度目の「市区改正」が行われている事実について、ますます明らかにしなければならないことが分かった。この移行期において、どのように主体の変質が行われて行ったのかを把握することで、地方都市の一典型における近代都市の出来方に迫ることができると考えられる。これが次年度に研究とりまとめをする前提として示すべき項目と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、今年度に明らかにした法定都市計画の時期の動向を把握した上で、研究とりまとめにあたるのみと考えていたが、上記の通り、明治末~大正期の都市建設状況(第二次市区改正を取り巻く状況)を同じ視点で解明する必要があるため、第一にこの実態調査を進める。 また、次年度においては、成果のとりまとめ、発表にも尽力したいと考えている。
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