都市の防犯性向上を目的とした「防犯まちづくり」に対する社会的関心が高まっており,科学的な根拠を伴った効率的な計画が防犯まちづくりの現場から求められている.しかしながら,現状では施策導入そのものの必要性を問うプロセスが欠けているため,リスクレベルにかかわらず一様に施策導入を目指している状況にある.そのため,本当に施策が必要な地域への財源や資源の集中投資が阻害され,効率的な防犯まちづくりが実施できない状況にある.この解決のために,本研究では,地域の犯罪リスク評価を通して防犯まちづくり施策導入の必要性を判断するための「犯罪リスクアセスメント手法」を考案することを目的とした.本研究の成果は次の3点である. (1)犯罪リスクの評価・分析に役立つ都市的指標を洗い出すために,文献レビューを通して現在までに明らかとなっている我が国の犯罪ハザードを抽出した. (2)犯罪データの得られた茨城県日立市においてフィールド調査を実施し,犯罪ハザードデータを収集した.調査項目は(1)で得られた街区レベルの犯罪ハザードである.次に,収集した犯罪ハザードを利用して,対人犯罪,自動車対象犯罪,二輪車対象犯罪の3罪種の二項ロジットモデルをそれぞれ構築することで,各罪種の犯罪ハザードを同定するとともに犯罪リスク算定モデルを構築した. (3)主に労働災害防止や安全品質確保を目的として導入されることの多いリスクアセスメントの手順を防犯まちづくりに援用して犯罪リスクマップを作成した.犯罪リスクマップは,犯罪リスク値と犯罪発生頻度から街区の犯罪リスクを4段階のレベルで評価し,各レベルの今後の防犯対策の方針を示すものである. 以上,(1)~(3)のプロセスから犯罪リスクアセスメントの基本的枠組みを考案した.
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