研究課題/領域番号 |
24760419
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
稲垣 具志 成蹊大学, 理工学部, 助教 (20609945)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / 生活道路 / 交通安全施設 / 交差点横断 / 歩行支援 / 歩行軌跡 |
研究概要 |
屋外における視覚障害者の移動支援に関して、不特定多数が集う駅前広場、公共施設やその周辺の一部道路といった支援施設が豊富な場所と比べ、歩道がなく比較的幅員の狭い生活道路では視覚障害者の安全で安心な歩行空間整備が行き届いているとは言い難い現状がある。一方で、これまで生活道路では数多くの交通安全施設の導入が進んでおり、これらの施設が副次的な効果として視覚障害者の移動支援の可能性を有するのであれば、現状の生活道路における視覚障害者のモビリティの質を大きく向上させることが期待できる。 そこで、本研究では、生活道路での視覚障害者の単独歩行で特に困難な場面と言われる交差点横断時に着目し、交通安全施設の移動支援面における有用性について検討した。評価対象施設として、ドットラインとカラー舗装を選定し、日常より単独歩行に慣れている視覚障害者を実験参加者とした歩行実験を東京都武蔵野市内の実際の生活道路において実施し、歩行速度、歩行軌跡、主観的評価の視点から横断実態を評価した。 その結果、横断の手がかりとして交通安全施設を利用する方法について情報提供すると、ロービジョン者の歩行速度は大きく変化しないが、全盲者では有意な速度低下がみられた。また、アスファルト路面との輝度比の高いドットラインを利用することで、ロービジョン者の歩行軌跡が安定することや方向定位が容易となることが分かり、実験参加者へのインタビューからもその有用性が高く評価された。 一方で、カラー舗装は視認性が低いために実用性に欠けること、全盲者にとっては両者ともに現在の仕様のままでは支援性は低いことが示された。ただし、視覚的、触覚的コントラストの適正化によって有用性が高まることも指摘されており、次年度は、横断支援が可能なデザイン手法を見出すことを目的として、本実験結果に基づいたサンプルの製作ならびに歩行実験による評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画では、「研究目的」で設定された課題のうち、課題1と課題2について取り組むこととしていた。以下の通り各課題に対して一定の成果を得ており、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。 課題1「生活道路の無信号交差点における視覚障害者の横断実態を、横断行動の挙動解析や当事者による主観的評価により把握する」に対しては、東京都武蔵野市内における実際の生活道路において視覚障害者の歩行実験を実施した上で、歩行軌跡データの分析により得られる定量的指標により横断実態を把握するとともに、実験参加者へのインタビューを通して当事者の抱える困難状況を知ることにより、新しい施設デザインに関する示唆を得ることができた。 課題2「生活道路における交通安全施設が視覚障害者の歩行パフォーマンスに与える影響を定量的に明らかにする」に対しては、上記の歩行実験を「交通安全施設が整備されている交差点」と「交通安全施設整備されていない交差点」とで同様に実施し、分析結果を比較することで施設が横断行動へ与える影響を考察することができた。また、施設の横断支援性に関する実験参加者の主観的評価により次年度に向けた具体的な研究課題を抽出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、横断支援性の高い交通安全施設デザインの要件を導出することを目標として、前年度の横断実態の分析結果、主観的評価により得られた知見をまとめ、有効と考えられるいくつかのパターンをサンプル製作により設定して歩行実験を実施する。実験室の環境整備や道路施設・交通安全用品の製造メーカへの製作依頼については、当初の研究計画通りに進められる見込みで変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(9円)を平成25年度分請求の助成金額と合わせて使用することによる、使用計画の変更は生じない。
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