研究課題/領域番号 |
24760419
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
稲垣 具志 成蹊大学, 理工学部, 助教 (20609945)
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キーワード | 視覚障害者 / 生活道路 / 交通安全施設 / 交差点横断 / 歩行支援 / 歩行軌跡 |
研究概要 |
本研究は、生活道路における無信号交差点において、視覚障害者のより安全な横断を支援するための交通安全対策の活用方法を見出すことを目的として、歩行実験における実態観察に基づいた評価を実施している。 平成24年度では、生活道路の交通安全施設のうちドットラインとカラー舗装を取り上げ、実道路空間に整備されている交差点において歩行実験を実施し、視覚障害者の歩行状況を撮影した画像の解析により歩行パフォーマンスを評価した。その結果、ロービジョン者はドットラインを利用することで歩行軌跡が安定し方向定位が容易となることが分かり、実験参加者からも有用性が高く評価された。一方、ドットラインは全盲者にとって触覚的な手がかりとはなり得ないこと、国内普及率が高いベンガラ色のカラー舗装は軌度コントラストが低く全盲者、ロービジョン者双方に対して実用性に欠けることが導かれた。 平成25年度では、上記実験参加者へのインタビューにおいて抽出された、横断支援性を高めるために視覚的、触覚的コントラストを適正化する方法を整理し、数パターンの改良型の施設デザインを考案した。ドットラインでは全盲者に対して横断支援となるようドットの表面に突起を付設し、カラー舗装ではアスファルト路面との輝度比がより高い黄色、緑色、青色を選定しロービジョン者に対する支援性の向上を図った。これらの評価は実験パターンによる影響をより純粋に考察するために、大学敷地内の屋外道路において模擬的な生活道路交差点を設営し、平成24年度と同様の歩行実験を実施した。その結果、ドットラインに突起を設けることで全盲者の横断中の軌跡がより安定することや、カラー舗装については実験対象としたいずれの色においてもロービジョン者の心理的負荷を軽減する効果があることが認められた。次年度はこれらのデータ解析を進めることで定量的考察に基づく結論を得て、研究成果の取りまとめを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では「研究目的」で設定された課題のうち、平成25年度において課題3「視覚障害者の歩行支援において有効性の高い生活道路交通安全対策の仕様を導出する」について取り組むこととしていた。 計画当初は、交通安全施設の仕様の違いによる影響を的確に把握するために室内の防音無響室において実施することを予定していたが、大学構内において実験関係者以外の通行といった、歩行状況の評価を阻害するような要素がほぼない屋外実験道路を整備できることとなったため、実際の生活道路の歩行環境に近い当該道路において実験を実施することとした。したがって、実験場所の変更に伴いより現実的な要因分析、パターン評価が可能となるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の屋外実験の実施にあたり、冬季の天候不順が続いたことにより実験の実施期間の延期を余儀なくされたため、研究期間を延長し平成26年度に実験データの分析、結果の考察・評価を進め、その後研究成果の取りまとめを行うこととしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
屋外実験の実施にあたり、冬季の天候不順が続いたことにより実験の実施期間の延期を余儀なくされたため、データ整理、分析、研究成果の発表・取りまとめに関わる経費を使用できなかったため。 研究期間を延長し、平成26年度に実験データの分析、結果の考察・評価を進め、その後研究成果の発表・取りまとめを行うこととしており、これらに関する経費として使用する予定である。
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