本年度は、モバイルマッピングシステム(MMS)で計測した点群データから推計した視距と走行実験によって計測したカーブ進入時の速度低下特性に関して比較分析を行い、研究成果を取りまとめた。また、東アジア交通学会やベトナム・交通技術大学で発表するなど、本研究の成果の公開を実施した。本研究を通して、下記の点を最終的な成果として得ることができた。 1.MMSを用いた道路線形抽出方法の構築 取得した点群データからレーザーの反射強度、色情報を用いて、コンクリート、アスファルト、白線の抽出する技術(分類するためのそれぞれのデータの閾値)を明らかにした。抽出した白線間の車線中心を用いて、任意の地点の視距を算出する点群処理技術を確立した。また、交差点における道路見通し空間の定量的な推計方法を構築した。よって、点群データから道路空間の閉塞感まで定量化する手法を構築できたといえる。 2.速度低下に影響を与える要因の分析 視距の推計が可能となった区間を対象に、走行実験を行い、速度低下の状況を正確に把握した。具体的には曲線半径が90mと200mの右カーブを対象に複数回走行させ、その走行軌跡を高精度GPSを用いて計ることで、速度の低下状況を明らかにした。道路設計時に考慮されている横方向力は、曲線半径90mのカーブでは、進入時に大きく想定より増加していることがわかった。それと合わせて速度も低下していた。同時にMMSの点群データより推計した視距も進入時に速度の低下と同様に低下していることから、詳細な区間での速度低下の連続的な変化とその要因の関連性を明らかにすることができた。また、ドライバーへのアンケートの結果、カーブの閉塞感も視距、横方向力と相対して現れていることを確認することができた。
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