研究課題/領域番号 |
24760422
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀和 名城大学, 理工学部, 助教 (50583803)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バスロケーションシステム / センサネットワーク / 位置情報 / 公共交通 |
研究概要 |
平成24年度の研究実施計画に従って,(1)通信プロトコルの仕様策定およびシステム開発,(2)開発システムの動作検証,(3)実地調査および実証実験計画の立案の3つを実施した. (1)について,バスの位置情報,センサデバイスのバッテリ残量,スリープ指示などの情報を伝送するための通信プロトコルを策定した.このプロトコルはDECENTRA2と呼ばれるセンサネットワーク向けプロトコルスタック上で動作するように実装し,中継ノードに当たるセンサデバイス,バスに搭載する車載器,および位置情報を集積する管理端末の開発を行った. (2)について,大学敷地内にて小規模な無線センサネットワークを構築し,車載器を持った研究協力者を巡回させる検証実験を行った.その結果,管理端末にGPSから取得した車載器の位置情報を収集できることを確認した. (3)について,愛知県日進市の協力の下,コミュニティバス「くるりんバス」が運行する一部路線において,センサデバイスの電波強度測定および通信距離などの調査を行った.この実地調査の結果に基づいて設置計画を立案した.なお,当初の予定では平成25年度にセンサデバイスの設置および実証実験を行う予定であったが,平成24年度に協力企業のサポートもあり,一部のセンサデバイスは既にバス路線沿線の街路灯などに設置済みである. 上記研究成果および本研究の一部の研究成果を,学会にて3件発表した.うち1件については,情報処理学会MBL研究会においてインタラクティブセッション賞を受賞し,聴講者の注目を集めていた.また,愛知県が主催する博覧会「クルマ未来博2012」に出展し,研究内容の紹介や,開発中のバスロケーションシステムの一部展示デモを実施するなど,積極的な研究成果の社会に発信することができた.さらに,協力企業と共同で2件の特許を出願した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である,(1)無線センサネットワークによるバス位置情報収集システムの開発は90%達成したと考える.現在の所,収集したバス位置情報はテキストデータでしか確認できないため,バスロケーションシステムとして完成させるためには,地図上にリアルタイムでバスの位置を表示するなど,利用者にわかりやすい情報提供を行う必要がある. また,もう1つの目的である(2)広域無線センサネットワークの構築とバスロケーションシステムの実証実験については,前者のネットワーク構築は実施済みである.ただし,ネットワークの規模が限定されているため,こちらの達成度は60%と考える.なお,後者の実証実験については,平成25年度に実施する予定である. 以上の結果および研究実績の概要で述べた内容から,当初の研究計画はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に先行して実施したフィールドでの基礎実験から,新たに下記の課題が明かとなり,実際のコミュニティバスで長期運用するために解決する必要があることがわかった. 1)バッテリ寿命の問題 2)ネットワークの安定性 1)に対しては,太陽光発電システムを導入することにより,センサボックスの連続稼働時間を伸ばし,センサネットワークを長期間維持させる仕組みが必要である.平成24年度に前倒し請求により試作した太陽光発電システムの動作検証およびバッテリ駆動期間の評価を行う.ただし,研究費の制約上,全ての中継用センサデバイスに太陽光発電システムを導入することは不可能であるため,通信プロトコルの改良による省電力化を行う. 2)に対しては,センサボックスの配置位置の見直し,およびDECENTRA2プロトコルスタックのパラメータ最適化を行うことにより,ネットワークの疎通を確保する.また,各センサデバイスがどのセンサデバイスと接続しているかを記録したリンク情報を収集して,管理端末上でネットワークの接続性を確認できるよう,システムの改良を行う.また,現在使用しているセンサデバイスは2.4GHz帯の無線通信を行うが,障害物に強い920MHz帯のセンサデバイスを利用した場合の,ネットワーク接続性の変化および検証を行う. 以上の取り組みを実施した後に,フィールドにて長期間の動作検証実験を行う.センサネットワークの規模を拡大し,実際のコミュニティバスに車載器を設置して,バスの位置情報収集を行う.バスの位置情報収集成功率や,センサデバイスの故障交換率などを評価することにより,システムの有効性および信頼性を明らかにすると共に,屋外における広域無線センサネットワークの実用性を確認する.
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次年度の研究費の使用計画 |
センサボックスの配置を見直す際に,フィールドの複数地点で無線通信の状態をモニタリングする必要がある.そのために,パケットスニファを購入する.スニファを利用するためにはPCが必要であるが,平成24年度に購入したラップトップPCを利用する.なお,屋外での作業となるため,ポータブルバッテリを準備する.フィールド実験のエリアを拡大するために,無線センサデバイスおよび街灯などに取付設置するために必要な具材一式を購入する必要がある.また,使用する周波数帯の違いが,どの程度ネットワークの接続性に影響を与えるかを調査するために,920MHz帯を利用する無線機器開発キットおよびセンサデバイスを購入する.なお,このデバイスはDECENTRA2プロトコルスタックで動作可能なため,既に開発済みの通信プロトコルを実装・動作させることが可能である. フィールド実験では,パケットスニファによるデータ収集および解析や,バッテリの交換など人手が必要であるため,大学院生の協力を必要とする.そのため,研究協力者への謝金を確保する必要がある. 平成24年度後半に実施したフィールドでの基礎実験の結果などの研究成果を積極的に学会発表する.平成25年度は情報処理学会最大級のシンポジウムDICOMO2013,およびITS分野の世界最大規模の国際会議ITS世界会議2013での論文が採録されており,7月と10月に発表予定である.また,東海地区および全国規模の研究会などに積極的に発表する.これらの成果をまとめ,論文誌に投稿するため,これに関わる費用として使用する.
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