研究課題/領域番号 |
24760428
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本多 了 金沢大学, サステナブルエネルギー研究センター, 助教 (40422456)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 下水処理水 / 微細藻類 / バイオマス / 国際情報交換 |
研究概要 |
PVDF製中空糸型精密ろ過(MF)膜ジュールを浸漬した実験室規模リアクター2基を製作し,連続培養処理実験を行った。2基のうち1基は,基質滞留時間(HRT)の短縮によるプロセス性能を既存の研究成果と比較することを目的として,HRT=0.5日,セラミック散気装置を導入して運転し,もう1基には気泡サイズ微細化によるプロセス性能評価を行うためHRT=0.5日,超微細気泡散気装置を導入して運転を行った。連続運転開始前に, Botryococcus brauniiを稙種してBG-11培地にてバッチ培養を行った。リアクター内ではAnabaena属とみられる鎖状の細胞群を形成するシアノバクテリアが優占的に増殖した。2か月間のバッチ培養ののち,模擬下水処理水による連続培養を開始した。連続培養後,リアクター内の微細藻類は急速に減少し,30日経過後にはSSが10mg/L以下まで低下し,その後,汚泥の引き抜きを停止してもSSが回復することがなかった。このため,リアクター内微細藻類の増殖に必要な微量栄養素の過不足を確認するため,模擬下水処理水にBG11培地に含まれていた微量栄養素を加えてバッチ培養試験をおこなったところ,微量栄養素を加えなかったものでは増殖が見られなかったのに対して,微量栄養素を加えたものでは増殖が確認された。模擬下水処理水の組成は,これまでのリアクター実験では問題なく増殖がみられたものであったが,微量栄養素を加えたものに再検討する必要があることが分かった。また,超微細気泡散気装置による二酸化炭素散気実験の結果より,超微細気泡散気装置は通常のセラミック散気装置の約3倍の散気効率があることが確認され,藻類生産速度を約3倍向上させるポテンシャルがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
模擬下水処理水に含まれる藻類培養位必要な微量栄養素の検討を行う必要が生じたため,第一年度の目標としていたHRT短縮によるプロセス性能評価が行えなかったため。 一方,次年度の目標としていた気泡サイズによるプロセス性能評価については,その一部を前倒して実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
第一年度の微量栄養素試験の結果より,模擬下水処理水に必要な微量影響素を特定し,再び連続培養実験を開始する。運転条件は,2基のリアクターをそれぞれHRT=12時間,HRT=6時間で運転し,HRTの藻類生産速度および膜の目詰まりに与える影響を評価する。また,微細藻類種株には,増殖速度がB.brauniiより大きいChlorella vulgarisを新たに加え,前培養期間の短縮を図る。 微細気泡散気装置については,循環ポンプの発生熱がリアクター培養液の水温を上昇させるおそれがあるため,適切な水温制御が行えない場合には理論的なプロセス性能ポテンシャルとして評価することとする。 膜目詰まり物質の特定においては,三次元励起蛍光スペクトルおよび液体クロマトグラフィーを用いるとしていたが,当該分析機器が利用できない場合は,GC-MSや他の分析方法による分画・分析を検討する。 また,藻類バイオマス利用を念頭に置いて,培養液中の藻類バイオマスの組成も合わせて分析し,リアクター運転条件によるちがいと,膜目詰まり物質との関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の物品費は,主にリアクター運転と試料分析にかかる消耗品に対して使用する。すなわち,模擬下水処理水用試薬,リアクター供給用ガス,分析用試薬などである。 また,旅費は,メンブレンバイオリアクター研究において協働関係にある海外大学(米国UCLA,タイ・カセサート大学)との情報交換および打ち合わせのために使用する予定である。
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