研究課題/領域番号 |
24760429
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
山田 剛史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90533422)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | CTC / 脱窒細菌 / 微生物計測技術 / 蛍光アプタマー / 廃水処理プロセス / プロセス管理技術 |
研究概要 |
生物学的脱窒プロセス内の高活性脱窒細菌の正確な計測は、亜硝酸還元酵素遺伝子などの脱窒関連遺伝子の転写物を標的としたfluorescence in situ hybridization法や定量RT-PCR法などの非培養的な技法を選択することが望ましい。しかしながら、これらの方法は、高度な知識を要するだけでなく、操作の迅速性や簡便性と言う点で未だ問題がある。そのため、現在のところ、脱窒細菌の生菌数を正確に測定する迅速・簡便な技法は未だ知られていない。脱窒細菌の生菌数を迅速・簡便に計測する技法を確立するために、好気性細菌の呼吸活性菌計測法で用いられている5-cyano-2,3-ditolyl-2-tetrazolium chloride(CTC)染色法と蛍光性アプタマーを利用することを考案した。本年度は、CTC法を原理とした計測法の確立のために、脱窒細菌の数種の純粋株を用いて、硝酸呼吸由来のCTC還元反応の最適条件の検討を行った。 nirS型およびnirK型の数種の脱窒細菌を用いてCTC法(CTCの濃度と反応時間)の最適化を行った。CTC濃度1 mMの条件下においてCTC反応時間(1~72時間)の検討を行ったところ、いずれの反応時間においても90%以上のCTC染色率を示した。そのため、CTC反応時間を1時間と決定した。次に、CTC濃度の検討を行った結果、CTC濃度を1 mM以上にすることによって、脱窒細菌の純粋株の90%以上が、細胞内に蛍光性CTCフォルマザンを蓄積していることが観察された。このことは、CTC濃度を過剰に添加することによって、偽陽性細菌であってもCTC陽性菌として検出されることを示していた。そこで、硝酸呼吸に由来するCTC染色菌を明確に計測するためには、CTC濃度0.1~0.2mM程度とし、硝酸呼吸阻害剤を使用して反応性向上化させることが重要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脱窒細菌に対してCTC 法を適用する際の問題として、CTC 反応方法を工夫しないと酸素呼吸由来のCTC 反応微生物を測定してしまう。そのため、気相部をアルゴン置換した密栓バイアルを用いることと、適切な濃度の硝酸呼吸阻害剤を利用することで、脱窒細菌由来の正確なCTC 染色結果が得られると推測した。また、適切なCTC反応条件を検討し、脱窒細菌に対してCTC法を適用することが、非脱窒細菌由来の非特異的な蛍光を除く上で欠かせないことを予測していた。そこで本年度は、脱窒細菌生菌数の測定の核となるCTC法の最適化を実施した。CTC法の最適化のために、数種のモデル脱窒細菌を用いてCTC濃度とCTC反応時間(または短縮化)の検討を実施し、最適反応条件の決定および反応時間の短縮化することに成功することができた。しかしながら、上記条件検討に時間を割かれたことと、実験装置の故障・復旧などの問題が発生したことにより、当該年度に予定していたCTC反応性向上のための硝酸呼吸阻害剤の種類や濃度の検討や偽陽性細胞を除くための蛍光アプタマーへの研究に着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前半は、24年度に実施できなかったCTC反応性向上のための硝酸呼吸阻害剤の種類や濃度の検討を行う。これらの条件が最適化された暁には、非脱窒細菌と脱窒細菌を既定量で混ぜ合わせて、CTC最適反応条件下で染色を行い、脱窒細菌のみが染色されることをフローサイトメーターと分子生物学的技法で評価する。次に、ラボスケール脱窒プロセスの汚泥に対して、開発したCTC法を適用して、本技法によって脱窒細菌が計測できるかを判定する。平成25年度中盤から後半にかけて、偽陽性細胞を除くための蛍光アプタマーの探索を行う。非脱窒細菌と脱窒細菌をモデル微生物として、系統学的広く分布している脱窒細菌を網羅的に捉えられる細胞表面膜タンパク質を標的するアプタマーの探索を目指す。本年度終盤を目処に、モデル脱窒細菌を標的する蛍光アプタマーとCTC法との同時検出が可能かどうか評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費(総額1,200千円)の使用計画としては、CTC関連試薬および測定備品の調達(350千円)、アプタマー探索のためのSELEX法に関連する備品および試薬の調達(530千円)、スライドガラスやカバーガラスなどの蛍光観察関連備品(100千円)、プラスチックやガラス器具類の調達(70千円)および研究成果発表旅費(50千円)を計画している。
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