調査対象干潟である淀川河口干潟において,炭素収支を明らかにすることを目的に調査を行った.堆積物における炭素の吸収・排出速度は,地温が高い夏季に高く,地温と正の相関関係が認められた.また,呼吸速度よりも生産速度の方が高く,付着藻類による二酸化炭素の固定が行われていた.大気-海面における二酸化炭素フラックスは,調査期間中のすべての月で大気中に二酸化炭素を排出しており,水温と正の相関関係が認められた.大気-海面における炭素フラックスは堆積物における呼吸速度の0.81~9.4(平均3.8)倍であった.これらのことから,大気-海面の炭素フラックスは水温が影響しており,堆積物における炭素の排出分も含まれると考えられた.堆積物と大気-海面における炭素の吸収・排出の差を1ヵ月当たりの炭素収支として計算した結果,淀川河口干潟では調査期間中のすべての月で炭素を大気中へ排出しており,夏季の炭素排出量は冬季に比べて,約13倍であった. ヤマトシジミを中心とした炭素収支を定量化したところ,淀川河口干潟でヤマトシジミの有機炭素の生産量は27 gC/m2/year,無機炭素の生産量は126 gC/m2/yearであった.また,死亡量・呼吸量等を考慮したヤマトシジミの炭素収支について,ヤマトシジミは1年間で65 gC/m2/yearの炭素を固定しており,約2年半の調査期間中に調査対象干潟の3000 m2において487 kgCの炭素が固定されたことが推定された.P/B比について他の貝類と比べるとヤマトシジミのP/B比は比較的高く,効率よく炭素を固定していることが考えられた.
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