研究課題/領域番号 |
24760432
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢吹 正教 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (80390590)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超微小粒子 / エアロゾル / ライダー / UVCレーザー |
研究概要 |
本研究では、サブミクロン粒子の検出に用いられてきたライダー技術を、気管支や肺胞へ効率良く沈着する超微小粒子の時空間分布の把握に応用することを目的としている。平成24年度は、まず、仮想システムおよび仮想大気を考慮したシミュレーション実験を実施した。その結果より、UV-Cライダーによる多重散乱計測と、複数の可視光を中心とするライダーの単散乱計測との組み合わせが、超微小粒子を含む広い粒径範囲のエアロゾル検出に有効であることを確かめた。背景光ノイズが大きくなる日中のSNが悪い信号を想定した場合でも、粒径50-300nmの粒子検出が可能であることを示唆する結果が得られた。 次に、シミュレーションから提案された構成をもとに、波長266nmのUV-Cレーザを用いた射出・受信系の開発を行った。本研究費で購入した波長266nmが発振できるヘッドを、既存のレーザーに取りつけて、各光学機器の性能評価を行った。UV-Cレーザは、その光路中に不均一に分布するオゾンによる光吸収の影響を受けるため、通常の単散乱ライダー手法は使えない。そこで、本研究はで多重散乱を効率的に抽出する、観測視野角をライダー計測に同期して可変する機構を独自に製作してシステムに組み込んだ。また、ライダーからの超微小粒子検出精度を正確に評価するため、その比較観測を行うための観測小屋や係留気球システムの整備、および試験計測を実施した。 現在は、光化学反応により超微小粒子の生成が促進される夏季に実施予定の検証観測に向けて、断続的にライダーと直接計測機器との同期計測を行い、性能評価やその結果を基にした微調整を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の実施予定項目であった、超微小粒子を検出するためのライダー手法をシミュレーション研究から提案すること、またその提案を基にシステム構築を行うことを完遂することができた。更に、開発したシステムの性能評価を兼ねて、冬季~春季にかけて広範囲に観測された中国大陸からの汚染大気の計測にも適用することができた。長距離輸送された汚染大気は、相対的にサブミクロン粒子が卓越するが、この特徴を開発したライダーで精密に捉えることができている。本研究の検証観測は、超微小粒子の生成が促進され、その時空間変動が激しくなる夏季に実施予定である。一方で、既に様々な大気条件下での実証観測に適用しており、その有用性が確かめる段階にある点が、「計画以上に進展している」と評価した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
ライダー計測から得られる超微小粒子の情報の有用性を確かめるため、夏季に検証観測を実施する。光化学反応が活性化され対流活動が激しくなる時期においても、超微小粒子の分布特性を正しくトレースできるかを検証し、その成果をまとめて論文を投稿する。 また、UV-Cレーザを用いたライダーは、超微小粒子と同様に健康被害の要因となるオゾンや蛍光を発するバイオエアロゾルなどの計測にも有用である。本課題の主題とは離れるが、超微小粒子の検出に合わせて他の微量物質も同時に同定するシステムなど、UV-Cライダーを更に発展させるための提案を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
検証観測のためのライダー用消耗品(フラッシュランプ、光学ミラー)の購入に経費の約50%を使用する。また、旅費(研究打ち合わせ、観測、成果発表)に30%、その他(出版費、謝金)に20%の支出を予定している。
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