研究課題/領域番号 |
24760433
|
研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
井口 晃徳 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (60599786)
|
キーワード | メタン発酵プロセス / 未培養微生物 / 下水処理 / UASB |
研究概要 |
途上国への適用可能性および昨今のエネルギー事情の観点から再び注目されつつある下水処理メタン発酵プロセスにおいて、機能上重要であると考えられる下水処理メタン発酵リアクター内に高頻度に検出される未培養微生物 (Phylum Caldiserica (OP5)) の機能を明らかにし、下水処理プロセスにおける生物学的処理メカニズムを解明するための基礎的知見の収集を行なっている。前年度までに、構築したLab-Scale UASBリアクターにおいて組成の明らかな人工基質での連続培養系で標的未培養微生物を集積することができた。本年度は未培養微生物の詳細な機能推定を行うため、FISH法による標的微生物の空間分布の把握、バイアルビン培養による短時間培養とReal time RT-PCR法を組み合わせた基質利用推定技術の適用によって、標的未培養微生物のin situにおける機能推定を行なった。具体的には、標的未培養微生物に特異的なPCRプライマーセットを分子系統解析ソフトを利用することで設計した。標的未培養微生物のクローンを使用したリアルタイムPCR最適条件の検討を行い、10コピー程度を定量限界値とするリアルタイムPCR実験系を構築することができた。バイアルビン培養による様々な基質を添加して短時間の培養を行い、標的未培養微生物のRNA量を構築したリアルタイムPCR法によってモニタリングした結果、標的未培養微生物がプロピオン酸や酢酸を基質とした場合に有意に増加することが明らかとなった。このことから水素資化性メタン生成古細菌との共生によりプロピオン酸や酢酸といったVFAを分解している可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね順調に進んでいると考えているが、前年度に行おうとしていた途上国で実際に運転している下水処理UASBリアクターの調査とサンプリングが相手国側の事情 (政治的な情勢不安) によって行えなかった。標的未培養微生物の機能を明らかにする上で実際の途上国で運転稼働中のUASBプロセスの調査は必要と考えているので、次年度移行の課題としている。
|
今後の研究の推進方策 |
構築したUASBリアクター内の標的未培養微生物の機能を推定できたことから、今後は他の微生物とのin situにおける相互関係や増殖におけるキーとなるファクターを明らかにしていく必要があると考えている。具体的には推定した基質利用特性を基に、CE/MSやGC/MSを使用した標的未培養微生物の代謝産物の詳細な解析、さらには別途構築している新規微生物分離手法による標的未培養微生物の分離培養も行うことを想定している。また実際に途上国で運転している下水処理UASBプロセス内の標的未培養微生物の存在量の把握を行い、下水処理における本未培養微生物の特徴や生物学的処理メカニズムを明らかにしていく。一方で相手国の情勢不安により安全な渡航ができないと思われる場合は別の途上国か、国内における同様のプロセスの調査を行うことを想定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度に示したとおり、本来予定していた途上国の下水処理プロセスの調査をH25年度に行うことができなかった。対象国としてエジプト・アラブ共和国を想定していたが、政治情勢の不安等により、安全な渡航ができないと判断し調査を断念した。 次年度では、今後の研究方針に従い、それらを実験で使用する試薬、器具、装置を購入、調査に必要な旅費、得られた成果を学会発表するための学会参加旅費、論文投稿に関わる費用を研究費から執行する。実験消耗品については、蛍光標識プローブセット、微生物分離培養のための試薬類、未培養微生物の機能や代謝を調査するためのCE/MS, GC/MS関係の消耗品費等を予定している。旅費については、海外に設置されている下水処理UASBの調査等を考えている。国内外の学会では関連する学会 (水環境学会、環境フォーラム等)への参加旅費として執行する予定である。
|