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2013 年度 実施状況報告書

遺伝子定量技術を利用した水源におけるカビ臭産生微生物の早期検出・定量手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24760440
研究機関国立保健医療科学院

研究代表者

岸田 直裕  国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (10533359)

キーワード水道 / カビ臭 / 遺伝子
研究概要

本研究では、カビ臭の産生微生物・発生箇所の新規特定手法として、遺伝子定量技術(定量PCR法)に着目した。定量PCRは、微生物由来の遺伝子を対象とした定量手法であり、再現性が高い手法として知られている。水環境分野では、ノロウイルス等の病原微生物や藍藻毒を発生する有毒シアノバクテリアの定量に利用されている。カビ臭産生微生物に対しては、これまであまり用いられていない技術であるが、近年、「geo A」等のカビ臭合成にかかわる遺伝子の存在が報告され、これらの遺伝子領域を対象とした定量PCR系の構築が期待されている。
以上の背景に鑑み、本研究では、操作が簡便かつ迅速で、定量的な結果が得られる定量PCRを利用して、水道水源におけるカビ臭産生微生物の早期検出・定量手法を開発することを最終目的としている。
今年度は、ジェオスミンの合成に係わる遺伝子を対象とした定量PCR系の特異性を主に検討した。国内複数のダム貯水池、河川等からカビ臭原因物質の一つであるジェオスミン産生/非産生Anabaena属、その他のシアノバクテリア、その他の藻類を分離・培養し、複数の定量PCR系を適用した結果、PCR系によって特異性が大きく異なることがわかった。Putative geosmin synthaseを対象とした系(3139F/3245R)のみ、高い特異性を示し、その他の系では、カビ臭を産生しない株でも陽性となり、国内の水道水源における調査に使用するのは困難であると考えられた。この中には、国外で分離培養された株に適用した際に特異性が高かったと報告されている系も含まれており、定量PCR系のバリデーションの重要性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在までに、カビ臭原因物質の一つであるジェオスミンを産生するシアノバクテリアを対象とした定量PCR系について検討を進めている。全国広範囲の浄水場を対象として筆者らが実施したアンケート調査において、臭気原因物質の中でもジェオスミンは最も深刻な物質であることが明らかとなっている。また、主な臭気産生微生物は、シアノバクテリアのうちAnabaena属であることがわかっており、この微生物のカビ臭産生有無を早期に発見することは重要な課題である。
ジェオスミン生合成に関与していると推定されている遺伝子を対象とした定量PCR系の特異性を調査するため、カビ臭被害が発生しやすい国内の複数のダム貯水池、河川等の水源から、ジェオスミン産生/非産生Anabaena属、その他のシアノバクテリア、その他の藻類を分離・培養した。当初の研究計画以上の数の分離株を入手することに成功している。定量PCR系をこれらの株に適用し、当初の研究計画通り、特異性の高い定量PCR系を選定することができた。
一方、当初の研究計画では、今年度までに水道水源に存在するカビ臭を産生する微生物の関連遺伝子量とカビ臭原因物質濃度の関係を調べる予定であったが、限られた水源のごく一部の試料について調査したのみであり、この点では研究進捗に遅れが出ているといえる。水試料の濃縮、核酸抽出方法等の水源調査方法自体は確立しており、来年度は研究の遅れを取り戻すべく精力的に水源調査を実施する予定である。

今後の研究の推進方策

来年度は、今年度までに確立した水道水源調査方法、ジェオスミンを産生するシアノバクテリアを対象とした定量PCR系を用いて、国内のダム貯水池等を対象とした水道水源調査を精力的に実施する予定である。特にAnabaena属が原因のカビ臭被害が発生しやすい水道水源を対象とする予定である。
具体的には、水試料を濃縮した後、直接核酸抽出と定量PCRに供することで、定量PCR系の実用性について評価するとともに、ジェオスミン生合成に関連していると推測される遺伝子数とジェオスミン濃度の相関関係を調査する。この検討過程で、定量PCR系の特異性に問題が生じた場合は、プライマー・プローブの修正等を再度行う。水道水源調査にあたっては、採水地点に詳しい方の協力が不可欠であることから、研究代表者の所属機関が有するネットワークを利用して、水道事業体の職員の方々に採水等を協力していただく予定である。また、可能な限り、シアノバクテリア以外のカビ臭産生微生物を対象とした定量PCR系の検討も進めていきたいと考えている。また、本研究で得られた成果を学会等で公表することで、技術・知見の普及に努める予定である。

次年度の研究費の使用計画

研究費の効率的な使用により、残額が発生したため。
前年度未使用額(残額)は、調査試料数を増加させることで発生する消耗品代に充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Nationwide survey of microorganism-related off-flavour problems in Japanese drinking water treatment plants (2010-2012)2013

    • 著者名/発表者名
      Kishida N, Sagehashi M, Takanashi H, Akiba M.
    • 学会等名
      The 10th IWA Symposium on Off-Flavours in the Aquatic Environment
    • 発表場所
      台南(台湾)
    • 年月日
      20131027-20131101

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公開日: 2015-05-28  

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