研究課題/領域番号 |
24760442
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
島田 侑子 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90586554)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 歪速度 / 合成梁 / 動的実験 |
研究概要 |
研究初年度である平成24年度は,床スラブ付き鋼梁の履歴挙動や梁における合成効果について既往の研究や実験の分析を行い,梁の動的実験における重要なファクターの選定を行った.それらの考察から,床スラブと鋼梁の間におけるシアコネクタとして使用される頭付きスタッドの存在が,力学的挙動に寄与する可能性が高いと考えた.そこで,頭付きスタッドの押し抜き試験を載荷速度を変化させて実施することで,動的外力をどのように伝達していくのか,基本的な傾向を検討した. 今回の頭付きスタッドボルトの動的押し抜き試験は,これまで多く行われてきた試験体寸法と施工要領に基づいて製作したフラットスラブ形式の試験体を用い,千葉大学工学部建築構造実験棟で実施した.実験パラメーターは載荷速度4種類(静的載荷範囲として0.01mm/sを設定し,その他0.1mm/s,0.2mm/s,1mm/sを設定した)と試験体内での頭付きスタッドボルトの突出長さ2種類(110mm,80mm)である.載荷は所定の載荷速度を一定になるように保ち,床スラブを模したコンクリート部と梁フランジ部の相対ずれが30mmになるまで載荷した. 実験の結果,実験終了時までに発生したコンクリートの亀裂に明確な傾向が見られなかったが,載荷速度1mm/sの試験体は突出長さに関わらず,頭付きスタッドボルトが破断した.また載荷速度が大きくなるにつれて,頭付きスタッドボルト1本にかかる最大せん断力が上昇し,載荷速度0.01mm/sの場合に比べると載荷速度0.1mm/sでは7~13%,0.2mm/sでは2~11%,1mm/sでは19~24%と,ばらつきはあっても右肩上がりとなった.最大せん断力の値で見ると突出長さの違いによる変化はそれほど見られないが,せん断力-相対ずれ関係を見ると,突出長さが短い80mmの方が最大せん断力を示した以降のせん断力が急激に低下していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成梁の動的挙動を検討するにあたり,鉄骨梁とコンクリートスラブとの間を仲介するスタッドボルトが,動的載荷の中でどのようにせん断力を伝達しているのか確認する必要があると考えられたため,頭付きスタッドボルトの動的押し抜き試験を実施した.これは,最終的に合成梁としての挙動を動的荷重の影響を反映した要素の集合体として扱う際に重要な項目となると考えられたためである.また,アクチュエーターの動的応答特性が想定よりも小さかったため,部材を対象とした動的実験を行うまでに至らなかったため,実験装置や治具,試験体サイズの変更等の検討を行い,実験自体は次年度に実施することにした.
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今後の研究の推進方策 |
頭付きスタッドボルトの押し抜き試験の結果を更に分析し,ボルト1本当たりのせん断力に載荷速度の影響がどのように関係するのか検討する.また現在使用されている「各種合成構造設計指針・同解説」に記載されているせん断力算定式に対して,本実験のパラメーターである載荷速度や頭付きスタッドボルトの突出長さがどのように寄与するのか,既往研究で提示された別のせん断力算定式との比較も含め検討する.これらの検討から載荷速度を考慮したせん断力伝達機構を明らかにし,その機構を応答解析に適用できるよう簡易なバネで置換することを試みる. また,実験方法や試験体等を見直し,床スラブ付き鋼梁の動的載荷実験を実施することで,合成梁自体の動的応答についてデータを得る. 両者から動的荷重下での合成梁について簡易な履歴モデルを作成することを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,床スラブ付き鋼梁の動的繰り返し載荷実験を行う.試験体は実大の約1/3程度とし,冷間成形角形鋼管柱とH形鋼梁から構成され,柱梁接合部を通しダイアフラム形式としたト字形試験体,及びそれに床スラブをつけたものである.試験体梁端部に動的アクチュエーターを設置して鉛直方向に動的繰り返し荷重をかける.このセットアップは千葉大学建築構造実験棟の反力フレーム及び動的・静的アクチュエーター(島津製)を使用する.実験における主なパラメータは歪速度とデッキプレートのディテールであり,歪速度は準静的荷重レベルから強震時において梁に生じうる最大の歪速度相当の動的荷重レベルまで4段階の載荷速度を設定し,速度一定となる三角波により載荷を行う.またデッキプレートの有無やその構成により床スラブ自体の構成が歪速度に与える影響を検討する.これらの検討から動的載荷時の合成梁の履歴特性を明らかにし,静的載荷時の結果を用いて動的載荷時の挙動を導き出す対応式を提案する. また,前年度に実施した頭付きスタッドボルトの動的押し抜き試験の結果を用い,床スラブ,スタッドボルト,鋼梁について簡単なバネでモデル化し,動的荷重の影響を負荷バネとして扱うことで,履歴特性の中に反映する方法を検討する.
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