研究2年目である平成25年度は,前年度に行った床スラブ付き鋼梁全体の挙動に関する重要なファクターを考慮し,最大耐力時の応力状態について検討を行った.床スラブの合成効果によって,純鉄骨梁と比較して床スラブ付き鋼梁の耐力は大きくなることが知られている.しかし,設計指針等で示される耐力式にはこの床スラブの影響は反映されていない.これまでにも合成梁の最大曲げ耐力についての研究などは行われており,中には,これによる継手効率の低下が変形能力の低下に及ぼす影響を実験によって明らかにし,継手効率及び床スラブの影響を考慮した最大曲げ耐力の理論式を導いている例もあるが,この研究の実験試験体は不完全合成梁であったため,床スラブの合成効果を正確に反映できていない可能性がある.その他にも床スラブ要素のばらつき等もあり,最大曲げ耐力の一般化された算定式を提示するには至っていない.鋼構造建築のより現実に近い耐震性能を評価するためには,床スラブの合成効果を含めて,合成梁の最大曲げ耐力を把握し,簡潔な式で表す必要がある. そこで本研究では既往の実験式と実験結果を用いて応力分布を把握し,その適用範囲について検討した.使用した実験データは鋼構造骨組の柱梁接合部を模した実大ト型試験体で、いずれも完全合成梁のもの6体である.実験式は岡田らの式を用いて検討した結果,応力状態から塑性中立軸が梁断面のどこに位置するか確認することが重要であること,塑性中立軸の確認には柱スキンプレートの適切なメカニズム把握が必要であること,梁ウェブの局所変形や頭付きスタッドのせん断伝達については更なる実験データの収集が必要であることが確認できた.そして塑性中立軸が適切に把握できれば,床スラブの完全・不完全とはあまり関係なく最大耐力を評価できることがわかった.またこれらの検討を確認するための実大実験の準備を進めた.
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