本研究では,コンクリート表面に微細凹凸を施すことで太陽からの日射における短波反射率を制御し,これによって,太陽から入射する熱を夏期には反射し,冬期には吸収できる熱収支に太陽光の角度依存性を織り込んだ建材表面の設計と熱収支のモデル化を行うことを目的としている. まず初年度は,太陽熱を制御できるセメント硬化体表面設計技術の確立した.季節によって太陽熱を制御できるセメント硬化体薄膜は,それぞれの手法や用途によってCO2削減効果が異なると考えられる.既存の薄膜作成技術と凹凸設計技術をセメント硬化体に用い,表面微細凹凸にバリエーションをつけた厚さ50mmのコンクリート供試体を作成した.その結果,セメント硬化体表面への入射光に対して,反射率が角度依存性をもつ表面形状を考案し,実際に,精密切削機器を用いて,50μm幅,深さ100μm程度の凹凸形状をセメント硬化体表面に作成できる手法を確立した. また,材料サンプルレベルでこれらの複合要因を精密に(太陽光角度,内外気温差,湿度差)を制御して熱移動を模擬できる測定装置は少ないため,本研究の初年度としてこれを完成させた. そして初年度から次年度に至るまで検証した内容として,セメント硬化体表面の反射率の角度依存性によって,熱移動にどのような影響を与え,結果として建築空間に適用された場合の空間の熱環境性能を評価するために,材料表面の凹凸に伴って変化する短波反射を含んだ熱収支モデルを提案し,その妥当性を実験とモデルの比較によって検証した. これによって,建築材料の施工までの二酸化炭素排出量と,空間の熱環境性能を評価するためのデグリーデー法に基づいて得られた建築材料の省エネ効果から得られる二酸化炭素排出削減量を比較することで,この建築材料が利用された場合に及ぼす二酸化炭素排出量削減量と消費電力の削減量の効果を評価する手法を提案した.
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