本研究の目的は,緊張PC鋼棒で能動拘束したRC柱のせん断伝達機構を解明することである。PC鋼棒をRC柱の外周に外帯筋状に配置して緊張力を導入することで,「能動的横拘束効果」,「受動的横拘束効果」,「せん断補強効果」の3つの補強効果を期待できる。本研究では,主筋の付着がある試験体でトラス機構とアーチ機構,主筋の付着を除去した試験体でアーチ機構の検証を進めてきた。 最終年度となる平成26年度には,主筋の付着があるせん断スパン比1.5の試験体を製作し,せん断破壊実験を行った。設定した実験変数は緊張ひずみ(600μ,2450μ),軸力比(0.2,0.4)である。実験の結果,すべての試験体がせん断破壊したと考えられるが,(1)緊張ひずみが小さい場合,軸力比0.4の試験体の最大水平耐力は,軸力比0.2の試験体のそれに比べてやや小さい,(2)緊張ひずみが大きい場合は軸力比0.2と0.4の試験体の最大水平耐力はほぼ同じ,という結果が得られた。 研究期間全体で得られた結果としては,主筋の付着を除去した試験体の結果より,(1)能動側圧が大きくなるとアーチ機構強度も大きくなること,(2)軸力が大きくなるとアーチ機構強度が大きくなること,(3)能動側圧および軸力が大きくなるとアーチ機構圧縮域のせいは大きくなること,加えて主筋の付着がある試験体の結果より,(4)付着劣化はアーチ機構の負担せん断力を増加させるが,それ以上にトラス機構の負担せん断力を減少させる,という結果が得られた。 現在は実験データの検証をさらに進めている段階であり,2015年度中には検証結果を論文としてまとめたいと考えている。
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