研究課題/領域番号 |
24760458
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
張 景耀 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (50546736)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テンセグリティ / 自己釣合い / 無条件的安定 / 群の表現理論 / ブロック対角化 |
研究概要 |
張力空間構造であるテンセグリティ構造は、軸力がない場合に不安定であり、部材に軸力を導入することにより安定化させる構造形式である。したがって、その設計には、自己釣合い形状の決定(Form-finding)および安定性調査が二つ重要な問題となっている。しかし、テンセグリティの無条件的安定性(Super-stability)を調査ためには、軸力密度行列の固有値を調べる必要がある。構造物が複雑になるほど、安定となる条件を解析的に誘導することが困難となる。 初年度(平成24年度)では、一つの正則な節点軌道を有する点群対称性のテンセグリティ構造を主な研究対象とした。その高い対称性を利用し、群の表現理論に基づいて、その軸力密度行列を独立なブロックを対角成分とした形式に分解する定式化を提案した。軸力密度行列の固有値を求める際に、対象となる子行列(ブロック)のサイズは極めて小さいため、解析的な安定性条件式の誘導が可能となった。 上述の提案手法を使い、四面体群対称性を有するテンセグリティ構造に対して、その自己釣合い状態における異なる種類の部材の軸力モード(軸力密度)を解析的に求めることができた。さらに、ブロック対角化された軸力密度行列の子行列の固有値を計算し、その無条件的安定となる条件式を誘導することができた。 また、より複雑な六面体対称性を有するテンセグリティ構造に対しても、提案手法を適用し、自己釣合い軸力モードおよび無条件的安定の条件式を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 初年度(平成24年度)では、計画とおり張力空間構造の対称性を利用した既存の手法について検討した。 ② テンセグリティ構造の自己釣合い解析および安定調査に対して理論的検討を可能にするため、群の理論に基づき、軸力密度行列をブロック対角化する手法を定式化できた。 ③ 四面体群対称性を有するテンセグリティ構造の自己釣合い形状および無条件的安定性を解析的に誘導し、雑誌論文として採用された。 ④ 六面体対称性のテンセグリティ構造に対しても、一定の成果が得られ、いまのところ雑誌論文の執筆をしている。 ⑤ テンセグリティ構造に関する学術図書の出版計画はSpringer社より採用され、来年に出版する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、すでに得られた成果のもとで、以下のように計画とおりに研究を推進していくと考えている。 ① 引張材の弛みを考慮しない分岐経路の追跡:ブロック対角化された接線剛性行列を張力空間構造の座屈解析に応用する。剛性行列が解析的にブロック対角化されているため、数値計算による丸め誤差などを回避し、すべての分岐経路を正確に追跡することを試す。 ② 引張材の弛みを考慮した分岐経路の追跡:引張材が弛んだ場合、部材剛性が変わるため、線形剛性行列そして接線剛性行列も変わり、解の不安定になりやすい。この問題を解消するため、微小メカニズムを活用した解析法を提案し、張力空間構造の終局安全性を評価する。 ③ 構造性能および経済性両方を設計の評価指標とする最適化問題を考慮する。離散系である張力空間構造の最適設計問題に対しては、断面設計のための焼きなまし法(SA)や遺伝的アルゴリズム(GA)などのヒューリスティクスと、形状設計のための数理計画法を融合した最適化手法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度(25年度)には、ポーランドに開催される国際シェル空間構造協会のシンポジウムを出席し研究成果を発表することを予定し、テンセグリティ構造に関する図書を執筆するために多くの資料代や共著者である広島大学教授である大崎純先生との打ち合わせが必要となってくる。 したがって、計画した予算額より多めの出費となるため、前年度の予算の一部を本年度に執行となった。
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